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(この暗闇の森を抜けて、小さな街を探そう。
そこでオレは名前を隠し、ひっそりと生きる。
もう自分の手に負えない夢を抱えない。
自分の存在は小さいから……。
まるでこの広い森の中の小石くらいに……)
チェスターは生き延びるためだけに必死に走った。
それはまるで猛獣に追われている兎のような気持ちだった。
弱さゆえに立ち向かうことは叶わない。
ただ生きるために必死に逃げる。
それが今のチェスターにできるすべてだった。
そしてすべてのプライドを捨てて逃げるチェスターにイシュメルが猛然と迫っていた。
夢や希望を捨て、ただ生きることだけに必死なチェスターのすべてを奪うために。
そして二人の距離が二メートルまでに近づいたとき、イシュメルは死神の鎌を頭上に構え、その巨大な鎌をチェスターへと振り下ろした。
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