服従の洗礼

10/15
前へ
/171ページ
次へ
(この暗闇の森を抜けて、小さな街を探そう。 そこでオレは名前を隠し、ひっそりと生きる。 もう自分の手に負えない夢を抱えない。 自分の存在は小さいから……。 まるでこの広い森の中の小石くらいに……) チェスターは生き延びるためだけに必死に走った。 それはまるで猛獣に追われている兎のような気持ちだった。 弱さゆえに立ち向かうことは叶わない。 ただ生きるために必死に逃げる。 それが今のチェスターにできるすべてだった。 そしてすべてのプライドを捨てて逃げるチェスターにイシュメルが猛然と迫っていた。 夢や希望を捨て、ただ生きることだけに必死なチェスターのすべてを奪うために。 そして二人の距離が二メートルまでに近づいたとき、イシュメルは死神の鎌を頭上に構え、その巨大な鎌をチェスターへと振り下ろした。
/171ページ

最初のコメントを投稿しよう!

82人が本棚に入れています
本棚に追加