82人が本棚に入れています
本棚に追加
「ぐっ、ぐわぁぁぁ!」
イシュメルの死神の鎌を左肩に受けたチェスターはうめき声を上げながら、イシュメルの方を振り返った。
巨大な死神の鎌を手にしたジュナールの死神は、自分の渾身の一撃がチェスターの左肩に刺さったことに満足しながら、不気味な笑みを浮かべていた。
戦っても負ける、逃げても追いつかれる。
そんな八方塞がりな状況の中で、チェスターは死神の鎌から左肩を引き抜き、苦痛に顔を歪めながらイシュメルをにらんでいた。
イシュメルに統括棟の庭園で破れたときに、自分は死ぬとチェスターは思っていた。
そして今、その死期が目前に迫っただけだ。
チェスターはそんなあきらめの気持ちの中で
、右手で剣を握りしめ、イシュメルと向かい合った。
「ついに観念したか、青い瞳のミルド人。
じゃがな、貴様は簡単には死ねんのじゃ」
そう言って不気味に笑うジュナールの死神がチェスターは憎かった。
そしてチェスターは勝てないとわかっていながら、イシュメルに一矢報いると心に誓った。
「圧倒的な強さを誇るお前には、ミルド人の気持ちがわからないかもしれない。
お前は今まで弱者の気持ちを想像したことがあるか?
弱者の悲しみや悔しさを知ろうとしたことがあるか?」
その言葉はチェスターがずっと胸の内に秘めていた思いだった。
そして、その秘められていた思いが今、悲痛な叫びとなって、イシュメルに解き放たれていた。
最初のコメントを投稿しよう!