服従の洗礼

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チェスターは素早く振り下ろした剣をまるでスロー映像のような感覚で見ていた。 そしてまばたきするほどの一瞬の間で、チェスターの心の中にさまざまな思いが込み上げてきていた。 自分を否定されること、自分が支配されていること、自分が自分らしく生きられないこと、そんなたくさんの不満の中でチェスターたちは生きていた。 もしも願いが叶うなら、思い通りにならないこの世界の中で意味のある生き方をしていたい。 暗闇のこの世界を希望の国に変えていきたい。 いつの日か空を覆っていた黒い闇が消え去り、一筋の希望の光が差し込むそんな国へ。 チェスターは振り抜いた剣の軌道を見つめ、心からイシュメルの死を願った。 そしてチェスターの剣がイシュメルの首を斬り裂こうとしたとき、イシュメルの姿が残像を残したままに消え去った。 チェスターの剣が空を斬り、チェスターの瞳に絶望が宿る。 そして次の瞬間、イシュメルが手にした死神の鎌がチェスターの背中に深々と突き刺さった。
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