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「うっ、うわぁぁぁ!」
チェスターは恐怖にかられて悲鳴を上げると、聖なる部屋から逃げ出すために、この部屋に一つだけある出口へと走り出した。
そしてチェスターはその出口のドアノブをひねったが、どうしてもドアが開かない。
チェスターが見つけた唯一の逃げ道には、しっかりと鍵がかけてあるのだ。
チェスターはパニックの中でこの部屋から逃れようと、何度も何度もドアノブをひねっていたが、そんなチェスターをジュナール族の兵士たちが捕らえて、イシュメルの前へと引きずっていく。
チェスターはあの悪夢がもう一度起きる恐怖の中で、パニックになりながら叫び声を上げていた。
「さっきまでの威勢の良さはどうした? 青い瞳のミルド人。
貴様は牙を抜かれた負け犬じゃ。
貴様はもうジュナール族には逆らえん」
痩せこけた白髪の老人のイシュメルが、チェスターには怖かった。
チェスターの記憶の中にイシュメルに殺された残酷な光景がはっきりと残っていたから。
今すぐここから逃げ出したいと、チェスターは真剣に思った。
でもこの聖なる部屋には、その出口がなかった。
チェスターは圧倒的な強者の前で死の恐怖を感じ、完全に理性を失っていた。
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