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聖なる部屋でまた目覚めたチェスターは、イシュメルから十四度目のその言葉を聞かされていた。
「青い瞳のミルド人。
ワシから貴様に問うてやろう。
貴様は自分がジュナール族の下位種族だと認めて、ジュナール族に服従を誓うか?」
今までは信念を貫き、イシュメルのその言葉を拒絶していたチェスターの瞳から涙がこぼれ落ちてきた。
強くなりたいと思って、チェスターは剣の修行を積んできた。
いつの日かジュナール族の支配から逃れることを夢見ていた。
だけど、今からチェスターが口にする言葉で、そのすべてが崩れ去る。
チェスターはそれが悔しかった。
そしてチェスターは死んでも言わないと心に誓っていたその言葉を静かな口調で声にしていた。
「オレはミルド族がジュナール族の下位種族だと認める。
オレはジュナール族に服従を誓う」
高みを目指していたチェスターの心が地の底へと落ちていった。
その瞬間、イシュメルは不気味に笑い、ベッドに横になっているチェスターの顔を見下ろしていた。
チェスターの心は死に、チェスターには起き上がる気力もなかった。
自分はもう二度とジュナール族には逆らうまいという負け犬染みた気持ちだけが、チェスターの心の中を支配していた。
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