悲しみの魔剣士、チェスター・ロー

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(オレは夢も希望もないミルド人を何人も見てきた。 夢を失った人間は生ける屍だ。 毎日をまるでゾンビのように生きていやがる。 オレはそんな未来を拒絶する。 オレはミルド族に夢と希望を……) 手負いのチェスターに四体のタイガーバードが一斉に襲いかかってきたのは、チェスターの未来が閉じる合図だ。 チェスターは絶望の光景を見つめながら、右手で剣を握りしめていた。 でも、今のチェスターには未来を変える力がなかった。 チェスターの一生は無力さの中で、今終わる。 チェスター本人ですらそう思ったとき、闇に包まれたカサドラの森に奇跡が起きた。 チェスターに襲いかかってきたタイガーバードに氷の刃が振り注ぎ、一瞬にして四体のタイガーバードを倒してしまったのだ。 チェスターは何が起きたかもわからないまま、カサドラの森を見回していた。 すると、木の影からゆっくりと誰かが現れ、チェスターはその人影に目を向けた。 そしてチェスターはその人が誰かを理解すると、驚きの中で声を上げていた。 「お前はリンジー・ライアン……。 どうして氷のリンジーがこんなところに……」 自分の命を救ってくれたのはミルド族の嫌われ者、リンジー・ライアンだった。 チェスターはそのことに驚き、目を見開いた。 なぜ、リンジーは自分の命を救ったのか? その理解できない疑問がチェスターの頭の中で渦巻いていた。
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