81人が本棚に入れています
本棚に追加
/171ページ
(オレは夢も希望もないミルド人を何人も見てきた。
夢を失った人間は生ける屍だ。
毎日をまるでゾンビのように生きていやがる。
オレはそんな未来を拒絶する。
オレはミルド族に夢と希望を……)
手負いのチェスターに四体のタイガーバードが一斉に襲いかかってきたのは、チェスターの未来が閉じる合図だ。
チェスターは絶望の光景を見つめながら、右手で剣を握りしめていた。
でも、今のチェスターには未来を変える力がなかった。
チェスターの一生は無力さの中で、今終わる。
チェスター本人ですらそう思ったとき、闇に包まれたカサドラの森に奇跡が起きた。
チェスターに襲いかかってきたタイガーバードに氷の刃が振り注ぎ、一瞬にして四体のタイガーバードを倒してしまったのだ。
チェスターは何が起きたかもわからないまま、カサドラの森を見回していた。
すると、木の影からゆっくりと誰かが現れ、チェスターはその人影に目を向けた。
そしてチェスターはその人が誰かを理解すると、驚きの中で声を上げていた。
「お前はリンジー・ライアン……。
どうして氷のリンジーがこんなところに……」
自分の命を救ってくれたのはミルド族の嫌われ者、リンジー・ライアンだった。
チェスターはそのことに驚き、目を見開いた。
なぜ、リンジーは自分の命を救ったのか?
その理解できない疑問がチェスターの頭の中で渦巻いていた。
最初のコメントを投稿しよう!