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チェスターとリンジーの戦いは二時間続き、チェスターはリンジーの強さの前に自分の弱さを思い知らされていた。
リンジーに打ちのめされたチェスターは、カサドラの森の大地に倒れて動けず、弱さという絶望の中で、雲に覆われた空を見上げた。
「チェスター・ロー。
お前は自分の弱さを思い知ってもまだ強くなりたいか?」
チェスターはリンジーの言葉に答える気力もないまま、自分の胸に尋ねてみた。
もしも自分が強くなれれば、自分の未来はきっと変わる。
もしも自分が強ければ、自分は自由と未来を手に入れられる。
もしも自分が強ければ……。
もしも自分が強ければ……。
チェスターは自分の未来に絶望する度に、強くなりたいという願いを胸の内に重ねてきた。
チェスターの理想の自分は、強くて、誰にも支配されず、同胞を助けてやれるそんな自分だ。
夢と希望を失った同胞たちの濁った瞳に、再び光を宿せるそんな自分だ。
自分は強くなることをあきらめられない。
自分が強くなることをあきらめたとき、世界はきっと絶望の暗闇へと変わっていくから。
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