実力の違いの中で

7/8
前へ
/171ページ
次へ
チェスターとリンジーの戦いは二時間続き、チェスターはリンジーの強さの前に自分の弱さを思い知らされていた。 リンジーに打ちのめされたチェスターは、カサドラの森の大地に倒れて動けず、弱さという絶望の中で、雲に覆われた空を見上げた。 「チェスター・ロー。 お前は自分の弱さを思い知ってもまだ強くなりたいか?」 チェスターはリンジーの言葉に答える気力もないまま、自分の胸に尋ねてみた。 もしも自分が強くなれれば、自分の未来はきっと変わる。 もしも自分が強ければ、自分は自由と未来を手に入れられる。 もしも自分が強ければ……。 もしも自分が強ければ……。 チェスターは自分の未来に絶望する度に、強くなりたいという願いを胸の内に重ねてきた。 チェスターの理想の自分は、強くて、誰にも支配されず、同胞を助けてやれるそんな自分だ。 夢と希望を失った同胞たちの濁った瞳に、再び光を宿せるそんな自分だ。 自分は強くなることをあきらめられない。 自分が強くなることをあきらめたとき、世界はきっと絶望の暗闇へと変わっていくから。
/171ページ

最初のコメントを投稿しよう!

82人が本棚に入れています
本棚に追加