プロローグ

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「チェスターの言う通りね。 この世の中は間違っている。 でもね、チェスター。 私たちミルド族は、その間違いをすべて受け入れなくてはならないの。 私たちは弱いから……。 ジュナール族には勝てないから……」 チェスターは自分を抱きしめている母の体が震えていることに気づいていた。 母は悔しくて、泣きながら震えているのだ。 チェスターはそんな母の震えを感じながら、弱いことは悪なのだと思っていた。 ミルド族は弱いから支配されている。 ミルド族は弱いから自由を奪われている。 ミルド族は弱いから未来が闇に閉ざされている。 ミルド族は弱いから……。 ミルド族は弱いから……。 チェスターは涙を拭い、固い決意を胸に母に話しかけていた。
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