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午後3時、統括棟の庭園にはアイザックとリンジーの戦いがあることを聞きつけたたくさんの人たちが訪れた。
ジュナールの犬であるリンジーがアイザックに反旗を翻したというニュースは、ミーリアの街に住むミルド人には寝耳に水の出来事だった。
「なんでリンジーとアイザックが戦うんだ?
だってリンジーはジュナール族の犬だろ?」
「どうやらそうでもないらしい。
リンジーはジュナール族を嫌っていたらしいんだ」
「あの氷のリンジーがジュナール族を嫌ってた?
あれほどオレたちを苦しめてきたリンジーがか?」
「リンジーの気持ちはオレたちにはわからないさ。
オレたちにわかっていることは、アイザック様に逆らったリンジーが、今日、統括棟の庭園で死ぬことだけだ」
ミーリアの街を支配しているアイザックは、今日の午後だけはミルド人の強制労働を解除し、ミルド人を統括棟の庭園に集めた。
それはリンジーをミルド人の前で公開処刑するため。
アイザックは自分の強さをミルド人に見せつけ、ミルド人がもう二度とジュナール族に逆らえないようにしようと考えていた。
そして午後の3時になろうとしたとき、たくさんのミルド人を集めた統括棟の庭園に漆黒の鎧を身につけた大男、アイザック・シェリーが現れた。
独特の禍々しいオーラを身にまとったアイザックが統括棟の庭園の中央へと歩いていくと、統括棟の庭園がざわめき始め、たくさんのミルド人たちがアイザックに恐れをなしてざわめき出した。
そしてそのたくさんのミルド人の中に、リンジーに剣を教わったチェスターの姿もあった。
チェスターは圧倒的な威圧感を持つアイザックを見つめながら、リンジーの勝利を願っていた。
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