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イシュメルとジュナール族の兵士たちは、ミルド族の若者を一人一人見定めていったが、まだ生け贄は決まっていなかった。
イシュメルに顔をのぞき込まれた若者は、まるで拳銃を額にあてがわれているかのように怯えていた。
そして、ついにイシュメルは赤い髪の小柄な少女の前で足を止め、不気味に笑いながらギョロリとした目を見開いた。
「見つけたぞ。
ジュナールの犬にふさわしい小娘を!
貴様は服従の洗礼を受けるに値する。
貴様を聖なる部屋に案内しよう」
「なんで?
どうして私が?」
赤い髪の少女がそうつぶやいた次の瞬間、ジュナール族の兵士たちがその少女の体を取り押さえた。
そして抵抗する少女を無理矢理連行し、その少女を連れ去っていった。
おそらくあの赤い髪の少女は、さっきイシュメルが口にした聖なる部屋に連れて行かれるのだろう?
そして彼女はその部屋の中で、イシュメルから服従の洗礼を受け、不幸な運命を背負い、短命のうちに死ぬだろう。
チャスターはそのことを思うと、悔しさの中で固く拳を握りしめ、イシュメルへの復讐を心の中で誓っていた。
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