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(イシュメルがオレに近づいてくる。
オレはイシュメルに対する憎しみを隠し通すことができるか?
できるなら、今すぐあいつを殺してやりたい。
オレに力があれば……。
絶対的な力があれば……)
もしも夢が叶うなら、ジュナール族に支配されないミルド族の独立国を作りたい。
その国には夢と希望があって、努力は必ず報われる。
そしてその国には虹色の未来があって、すべてのミルド人が笑いながら暮らしている。
そんな理想郷をいつの日か作りたい。
それが自分とミルド人の夢だから……。
「次は貴様じゃのう」
ついにイシュメルはチェスターの手が届く位置に来て、チェスターの顔をのぞき込んだ。
チェスターはそんなイシュメルから目をそらし、必死にイシュメルへの憎しみを隠していた。
イシュメルの視線がチェスターの体を舐めるように、チェスターのすべてを見定めていく。
チェスターの鼓動は速くなり、息も苦しくなっていた。
イシュメルに服従の洗礼を受けたリンジーも、今の自分と同じ気持ちを味わったのだろうか?
チェスターがそんなことを思っているとき、イシュメルのしゃがれた声が聞こえてきた。
「青い瞳のミルド人。
貴様は服従の洗礼を受けるに値する。
貴様をジュナールの犬に選んでやろう」
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