イシュメルに剣が届けば

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頭から血を流して地面に這いつくばっているチェスターの意識が遠のき始めた。 そしてそれと同時に、今までずっと大切にしてきたチェスターの夢と希望が、急に色あせて、輝きを失っていた。 イシュメルは強い。 その強さは圧倒的で、ミルド人に夢を見させない。 今、統括棟の庭園にいるミルド人は、ミルド族がジュナール族の下位種族だと認めてしまっているだろう。 チェスターにはそれが悔しかった。 いつの日か来ると思っていた革命の日が永遠に来ないような気がしていたから。 「こいつを聖なる部屋に連れていけ。 こいつは立派なジュナールの犬になる」 チェスターはイシュメルの言葉を否定したかったが、声を出すこともできなかった。 そしてジュナール族の兵士たちがチェスターの体を確保したとき、チェスターは完全に意識を失っていた。
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