1 幽霊の依頼

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「先生のスマホの待ち受け、佐夜ちゃんが高校の制服を着て撮ってる写真なんだけど……。 桜がバックだから、きっと入学式だよね。」 「待ち受け?」 思いもしない展開にサヤの思考がフリーズする。 「やっぱり知らないんだ。 ……って言っても、俺も見せてもらったっていうより、たまたま見えちゃったって感じだからね。 先生、確か、佐夜ちゃんの入学式、行けてなかったよね?」 サヤは黙って頷く。 入学式どころか、中学の卒業式も入学式も、ついでに言えば小学校の卒業式にも来ていない。 行事の中でも大きいと言える行事ですら、亮悟は出席したことがない。 「本当は行きたかったんだろうなぁって、待ち受けに佐夜ちゃんを見つけた時、思った。」 「そんなの……日下部先生の勝手な想像じゃないですか。」 ぼそっとサヤは呟き、日下部から顔を背ける。 どんな話を聞いたって、サヤの父親イメージは揺るがない。 サヤにとって父は、冷たくて、サヤに無関心な遠い存在。 「帰ります。失礼します。」 目を逸らしたまま、日下部へお辞儀をし、執務室のドアを開けた。 「佐夜ちゃん!」 サヤは背中で日下部の声を聞く。 「先生が入学式に行きたかったかどうかは、確かに勝手な想像かもしれない。 でも、先生が佐夜ちゃんを大事に思っているっていうのは、真実だよ。」 サヤは、振り返ることも立ち止まることもせず、執務室を後にする。 まだ固く閉められている応接室の扉にちらっと視線を飛ばし、サヤは事務所から出ていった。
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