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「はぁ。」
大きなため息とともに、ガシガシと頭を掻きむしる男子生徒のイラついた様子に、サヤは、さっきよりは小さくではあるが、ビクついた。
そこで初めてサヤの存在に気づいたように、男子生徒が視線をサヤに移した。
「……あれ? 目、合ってる? 気のせい?」
男子生徒は呟き、サヤの顔の前でヒラヒラと自分の手のひらを振った。
「え……っと……。」
サヤは眉を顰め、何と言ったものかと逡巡した。
「俺の声、聞こえてる?
……まさかね。」
男子生徒はそう言うと首を竦めた。
「き……聞こえてます……けど?」
サヤは、何を言っているんだろうか、この人は……という思いを抱きながらも答える。
男子生徒は、目を見開いた。
「え、マジで?
俺の言葉、聞こえてんの?」
男子生徒の勢いに圧倒されながらも、サヤは頷く。
「やった!
やっとだ、やっと。
俺の声、聞こえるってことは、こっちの世界の人ってことだよな?」
男子生徒はサヤの方へ手を伸ばし、サヤの腕を掴んだ……ように見えた。
「え?」
サヤは絶句する。
相手の手がサヤの腕を貫通しているように見えたからだ。
呆然としているのは相手も一緒だった。
サヤの腕を突き抜けてしまっている自分の手を見ながら、固まってしまっている。
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