プロローグ

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プロローグ

その日はハロウィンで午後七時から渋谷駅前のスクランブル交差点周辺は『歩行者天国』になっていた。 交差点の上は人がギュウギュウ詰めだ・・。もうこれはただの『人混み』と言うよりは満員電車の車内の雰囲気だった。 俺は今日、彼女の美羽とハロウィンデートを楽しんでいた。そして俺はここで壮大な計画を彼女に披露しようとしていた。 「孝道! 今日のデートは失敗だったね。こんな『人混み』・・最低かも・・。全然進まないし・・」 スクランブル交差点の『人混み』の真ん中で美羽は俺にそう言った。全然進まないのは俺の作戦通りだったけど・・。 俺は腕時計を見た。時間まであと十秒。 美羽は可愛い瞳で俺を見上げて言った。 「ねぇー孝道! これじゃデートにならないから帰ろうよ!」 その時だった。スクランブル交差点に大きな声が響いた。 「美羽さん!!」 彼女がその声の方向を見つめた。『人混み』の中の全員も一斉にそれを見上げた。 「えっ!?」 その先の大型ビジョンに紅いバラの花束を持ち正装した男性が映っていた。 それを見た美羽が俺と画面を交互に見つめ、驚いた様に叫んだ。 「えっ!? 孝道! 貴方、あそこで何しているの!?」 俺はそれには答えなかった。美羽も次の言葉に大型ビジョンに釘付けになった。
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