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「面倒だがやるかぁ~」  三蔵の緩い声が店に響いた。 「え?やるって何を?」 「あの男を浄化するんですよ。まぁ・・・できるかどうかはわかりませんけどね」 「浄化?」 「うん、あいつを(みそぎ)にかけるんだよ。でもなぁ・・・・、今回は餓鬼の数が半端じゃないからどうだろなぁ」  一応、戒と空が説明をしてくれたが、周には相変わらず何のことだかさっぱりわからない。 「まぁ、見てりゃわかるさ」  三蔵が呑みほしたグラスをカウンターに置いて、怠そうにゆらりと立ち上がった。 「野郎ども、今回は降三世明王(ごうざんせみょうおう)の間でやるぞ」 「降三世明王とはまた・・・・」 「まぁぴったりなんじゃねぇか」 「あっ、報告終わったぞ!淨、いいもんくれよ!」 「ばぁか。禊が済んでからだろうが」  相変わらずのマイペースっぷりで、四人がなにやら店の奥に進んでいくのを、周は呆然と見ていた。そもそも淨が空に約束した『いいもん』なるものが、本当にあるのかも怪しいものだ。当の空は、全く疑っていないようだが。 「周、行かねぇの?」  空に声をかけられて、周は慌てて皆の後を追ったのだった。  店の奥に入ると丸い部屋に出た。いや、部屋と呼ぶには少し違うかもしれない。部屋を取り囲むように壁にはいくつもの扉があった。三蔵が迷わずそのうちのひとつを開けて中に入っていった。それに続く三人。  周は心臓がバクバクとなるのを感じていた。緊張、期待、恐怖・・・・そのどれもが合わさって、周は今こんなにも心拍数が早くなっている。  これから何がはじまるのか。何が始まっても、周がこれまでに経験したことのない世界が待っているに違いないことだけは確信が持てた。  ごくりと喉を鳴らし、ぎゅっと手を握ると幾分汗をかいていた。周は意を決して、皆の後に続いて扉を潜った。
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