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「だから、危ないって言ったのにぃ」  ぴょんと跳ねるように起き上った空は、立ち上がり周に手を差し出した。 「早く起きろって。いつまでそうやってんだよ」 「えっ?あぁ・・・・ありがとう・・・」  空の手を取り立ち上がると、クラスメイト達が驚いた様子で遠巻きにこちらを見ている。  机の上を見ると、先程周が火を近づけた缶は見事に粉砕していた。 「え・・・・どうしてこんな・・・・・」  更に周を驚愕させたのは、辺りに散らばった小さな無数の釘だった。  自らの体を見下ろすと、腕にいくつもの小さな傷ができていた。当然体にも当たり、そこからは血が滲みワイシャツを汚している。  科学の岸和田が慌てて近づいてきた。 「土方君、君はどうしてこんなことを!」  禿げた頭まで真っ赤にして、周を攻め立てた。 「あぁ?おっさんバカなの?周がこんなん自分でするわけないじゃん。それより、こいつ怪我してんだぜ?治療がさきだろ?」  不遜な態度で岸和田に言ったのは、空だった。 「あぁ・・・そうか・・・そうだね・・・じゃぁ土方君は保健室に・・・」  岸和田が言い終わらないうちに、空は周の手を引いて科学室を後にした。 「あ・・・あのさ・・・・、どうして空さんがここに・・・それに、なんか先生とか全然、空さんに普通だったんだけど・・・・」  廊下を歩きながら周が言うと、空が勢いよく振り返る。 「あのさ、やっぱお前バカだろ!」 「いや・・・・そう・・・かなぁ」 「あぁ、バカだね!今問題はそこじゃない!俺が助けなければお前どうなってたかわかんないんだぞ!」  確かにそうだった。小さな無数の釘がもしも目に当たっていれば、いとも簡単に失明しただろう。 「そぉか・・・空さん、助けていただいてありがとうございます」  そう言った周に空は、呆れたような目を向けた。  実際周は、自分の怪我のことよりも、爆発の事よりも、空がどうしてクラスで普通にいられたのか、そっちの方が気になっていた。現に今も、初めて来たはずの周の学校で、周の手をひきずんずんと保健室に向かっている。なぜ、空が保健室の場所を知っているのか?しかし、それを聞けばまた、空に叱られてしまうだろう。周は散歩される犬のように、黙って空に着いていった。  そうして迷うことなく保健室にたどり着いた空はその戸をがらりと開けて、周を中へと引きいれた。 「え・・・・・・?・・・・ぇぇええええええっ!」  中に入った周は叫ばずには居られなかった。
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