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「そんな・・・神や仏が存在するわけ・・・・」
そこまで言って、周は言葉を飲み込んだ。神や仏が実在するはずなどない・・・そう言ってしまうのは簡単だ。しかし、そうであれば目の前の餓鬼たちはどう説明をつけたらいいのだろう。
「いますよ。神も仏も・・・・ちなみに、第六天魔王もね」
穏やかな笑みを浮かべて、戒が周を見た。
「いや・・・・でも・・・・・」
目の前の光景に、頭が追い付かない。
「でもも、へったくれもねぇんだよ。てめぇが見ている餓鬼が全てだろうが」
面倒そうに淨が言った。
確かにそうだ。最初は半透明に見えていた餓鬼たちが、今でははっきりと実体を持って見えている。客の男には見えていないようだが・・・・。
どうして自分にそんなものが見えてしまったのか、わからない。これまで霊感の類など、一切なかった。
「あの・・・・どうして餓鬼たちはあの人に?」
答えたのは戒だった。
「あれらは、あの男の煩悩にたかっているんですよ」
「煩悩?」
「えぇ、人間にはみな煩悩があります。しかし、行き過ぎた煩悩は、自分も周りも滅ぼす・・・・と、同時にあぁいった輩のいい餌になってしまうんです」
「じゃぁ・・・・あの男の人はどうなるんですか?」
「破滅・・・・だろうな」
言ったのは淨だった。
にやりと笑った淨の目の奥にひどく冷たいものを感じて、周は全身が一気に鳥肌がたった。
「では・・・・・、淨。お願いしますね」
「はぁ?なんで俺だよー。あー、そうだちび猿、てめぇ行ってこい」
「えぇ?なんでだよ!今回は淨の番だろ?それに俺はちびじゃねぇっ」
「ぐだぐだ言ってねぇで、早く行ってこい、ちび猿が」
「あー、またちびって言った!」
「あー、煩せぇ、煩せぇ、行って来たらいいもんやるからよ」
___どこへ行くのは知らないけど、今時そんな交渉、小学生だって乗りはしないだろう。
「まじかーっ!絶対、いいもんくれんだな!」
「おぉ、やるやる。だから早く行ってこい!」
「約束だからなっ!」
相変わらずマイペースで繰り広げられる三人の会話に、一瞬感じた恐怖も吹き飛び、周は苦笑いした。
___空さん・・・・って、凄い単純なのかもしれない・・・・・
いつの間にか客の男が立ち上がり店を出ていくところだった。
「じゃ、ちょっと行ってくるから、淨忘れんなよな!いいもんだからなー」
「おう」
空はご機嫌で、出ていった男の後を追うように店を後にした。
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