俺の冒険者登録

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俺の冒険者登録

係員が案内した先には屈強な男達が溢れる酒場が・・・有る筈は無くて、普通の服装でカウンター受付前の旅行客が寛ぐ憩いのスペースと変わりが無い風景だった。此処に居ないのは子連れの家族だけで、下は20歳から上は60歳位まで幅広い年齢層の男女が居た。 「彼方のカウンターに居る者に話しかけて下さいね」 俺の方に振り向き、銀行や郵便局の窓口みたいになっているカウンターを指して言う係員。そして俺が礼を言う前に役目を終えたのか元来た道を戻って行った。 「男性の受付が居ない・・・だと?」 俺はカウンターに居る者達に戦慄していた。其処に居たのは全て女性、しかも全員がそれなりに顔立ちが整っていらっしゃる。イキナリピンチです。 だが、冒険者になるには登録するしか無い。勇気を振り絞り受付嬢に話しかける俺。 「あの、その、ぼ、冒険者登録したいです・・・」 「ようこそ、冒険者登録所へ。登録前に適正調査を行う為、お名前とマイナンバーをご記入下さい」 「あ、はい」 家に届いてから一度も使用した覚えがないマイナンバーカードを財布から取り出して、受付嬢が出して来た用紙に記入する。 「ありがとうございます。お呼び出しいたしますので、近くの席で暫くお待ち下さい」 用紙を回収して笑顔で奥に立ち去る受付嬢。空いている席に座り暫くすると俺の名が呼ばれたのでカウンターに行く。先程の受付嬢が居て違う用紙を渡して来た。 「調査が完了いたしました。問題有りませんでしたので、此方に必要事項を記入して下さい」 必要事項を記入して行く。中にはドナー登録しますか? とか献血しますか? とか必要な事なのか不明な事が書かれていたが、全て記入し終えた。 「登録証を発行しますので、暫くお待ち下さい」 用紙を回収した受付嬢は立ち去る事なくカウンターで隠れた手元で作業を始める。先程よりも短い時間で済み、一枚のカードを俺に渡して来た。 「此方が冒険者の登録証になります。紛失した際は再発行に別途料金が必要になりますのでご注意ください」 「あ、その、登録料は?」 「安全上の理由で無人機による入金形態になっております。彼方に並んでいる機械でお願いいたします」 キャッシュカードかよ! とツッコミを入れる勇気のない俺は言われるままに無人機に立ち寄る。監視体制は整っているのか、離れた場所には屈強な警備員が複数立っている。貴方達に受付して欲しかったよ。 入金するのが俺一人みたいで他の機械には誰も居ない。鞄から札束の現金を取り出して入金する俺。登録料だけで諭吉さんが3桁必要って遊び半分では出来ないよな。 「これで俺は冒険者か・・・」 入金が無事終わり、カードには入金済みのマークが増えていた。この後必要な装備と食料を調達しないとな。俺の心は期待に満ち溢れていた。
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