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「そうして私たちは袂を分かちました。ふと廊下で出逢い、偶さか目的地が同じであった。それだけのことなのです。十分にも満たないような道のりでしたでしょう」
先ほどから吉奈さんと河津さんは黙りこくっています。
「詰まらぬ事を滔々と述べ立て、お時間を空費させてしまいました。申し訳ありません。お二人にはどうしても、」
「天ちゃん」と、河津さんが私の言葉を遮りました。
「違うよ。詰まんなくなんかないよ。そんなことより……」
「何で言わなかったの」
中途で言葉を失った河津さんの後を、吉奈さんが引き継ぎました。
「……それは」
「いつまで学校来るの?」
「来週一杯です」
「もうすぐじゃん!」
河津さんがテーブルを叩きました。雑音が店内に響きます。
「向こうに行くのは?」
吉奈さんは平板な声音を保っています。
「再来週の火曜です。十時の新幹線でこちらを発ちます。あの、お二人にお伝えできなかったのは、」
「天城」
吉奈さんが席を立ちました。
「応援してる」
そして彼女は出口に向かって行きました。
「天ちゃん。私……」
河津さんは顔を背け、そして吉奈さんの後を追いました。
テーブルにはカップが三つ残されました。
もう、氷は溶けています。
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