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まるで目が覚めた様に白い世界から色付く世界へと引き戻される。
「大丈夫?」
「あ、あぁ。そのブローチ。まだ着けてくれてたんだな。」
「思い出したのね?!」
「全てではないけど、フィルリアと最初に出会った頃の事を思い出したよ。それに、多分水魔法も使えるようになった。」
「あぁ…マコト…よかった…」
「フィルリアには返せないくらい色々なことで世話になってたんだな……ありがとう。」
「お礼なんて言われても困っちゃうわよ。私は私のやりたい事をやっただけだもの。」
「それが俺と凛には凄く大切な事だったんだよ。」
今思い出した事だとしても、あの時両親に手を掛けた連中の事は許せそうにない。
憎しみが心の中をジワジワと侵食している。
それでもフィルリアとの毎日を思い出した事でそれがダムの様に塞き止め、堤防となってくれている。
それは紛れもなくフィルリアが築いてくれた物だ。
「今日は遅いし泊まっていきなさい。」
「良いのか?」
「今更何を言ってるのよ。気にする事なんて無いわ。」
「じゃあお言葉に甘えるよ。」
フィルリアは笑顔で頷くと台所へと向かっていく。
凛も後に続いて台所へ消えていく。
「……はぁーーー………」
「長い溜息だな。大丈夫か?」
「ん?あぁ。フィルリアさんの前だとどうしても緊張してな…」
「そんなに酷かったのか?」
「そりゃぁもう…何度も死に目を見た。
それが魔力の無い俺に対する優しさだって事くらい十分に理解しているが…それでも怖いもんは怖いぜ…」
「あんなに強くなってんのにまだ怖いのか…」
「俺の強さ云々は関係ないさ。刷り込みってやつだな。」
「野生の動物みたいだな。」
「黙らっしゃい!」
凛とフィルリアが作った夕飯を食べるのも久しぶりだったので少し調子に乗って食べ過ぎてしまった。
消化をする間少し夜風に当たりたくて外に出た。
「ふぅー…食いすぎた……」
森の中だが、木々の間をすり抜けてきた風が頬に当たる。
上を見上げると木々の間から見える星空が美しい。
日本にいた時には街や家の明かりでここまで鮮明に星を見ることなど無かった。
化学という概念が進歩した事で見えなくなってしまう物も数多くあるのかもしれないなぁ…
「マコト。」
「ん?フィルリア。どうした?」
「私も少し風に当たりたくて。」
「そっか。」
「………ねぇ、マコト。」
「ん?」
「マコトはこっちに来てからどんな事を思った?」
「どんな事って……?」
「こっちではあなたは色々な人から狙われる身よ。やっぱり嫌だった?」
「そりゃぁ狙われるなんて嫌だよ。」
「そうよね…」
「でも、そればっかりじゃないよ。
こっちに来たからジルやガリタにも会えたし、フィルリアとの大切な思い出も思い出せた。いい事ばかりじゃないのはこっちでも向こうでも一緒だよ。
それに、今まで大切に思ってきた人達を忘れたままなんて悲しいよ。やっぱり…思い出したい。嫌な事も含めて全部ね。」
「……そっか……ありがとう。」
「なんでお礼?」
「分からないわ。なんとなくよ。」
「真琴様ー!」
「おっと。凛がお呼びだ。」
「そうね。戻りましょ!」
その日は積もる話もあったので遅くまで4人で話を続けた。
「ふぁぁ………んん?」
起きると両脇に凛とフィルリア。
俺昨日一人で寝たような気がしてたんだが……
「ん……
おはよう…」
「おはよう。とりあえず離れようか。」
「もう少し……」
「離れい!!」
「あぅ!」
「凛も起きてるだろ!」
「ば、バレましたか…」
「ったく。なんで二人共ここにいるんだよ。」
「「………さぁ?」」
くそっ!こんな時だけ合わせてきやがって!
ジルとガリタには泊まること伝えてないし早めに宿に行ってやらないと。
「もう行くの?」
「ジルとガリタを待たせると可哀想だからな。」
「そう……」
「そんな顔すんなって。また来るから。」
「えぇ。ありがとう。」
フィルリアと別れてジル達の元に向かう。
宿に着くと丁度朝食を摂っているタイミングで、2人で朝食を摂っていた。
「おー…おかえりー…」
「どうした?元気ないな。」
「昨日報告内容をまとめるとかでギルマスの所に行ったんだけど、帰りが遅くてなー…眠い。」
「なんかすまんな。」
「あぁー。そうゆう意味じゃないから良いって。それより今日は武器屋に行くんだよな?」
「時間指定されてないし出来上がってるんじゃないか?」
「じゃあ早めに済ませるかー。私達も食べ終わったしすぐ行こう。」
ジルとガリタの朝食が片付いた所で武器屋に向かう。
「おっちゃーん。」
「早いな。」
「まだ出来てなかったか?」
「いや、出来たぞ。そこのお姉ちゃんの杖もなんとか出来たぞ。性能は劣ってしまうが、まぁかなり良くなったと思うぞ。」
出された武器は特に変わった感じはしない。
受け取って調べてみると確かに性能は1段階上がっている。
普通の杖では付与できないなんて言ってたが、なんとかガリタと凛の杖にも付与してくれたらしい。
質の良い鉱石だったから出来た事らしいが、詳しくは教えてもらえなかった。
企業秘密というやつだろう。
「こいつは素晴らしい仕事だな。おっちゃん。」
「誰に言ってんだ誰に。」
「そうだな。ありがとな。また来る。」
武器屋のおっちゃんに礼を言って外に出る。
「ほ、ほんとうに良いのか?!」
「私達まで…」
「一緒にレッドスネークを倒したんだから当然の報酬だろ?気にするなよ。」
「あぁ…ありがとう。」
「俺達は少し出てくる。二人は…」
「宿で休むよ。まだ眠くてな…」
「分かった。じゃあな。」
ジルとガリタを見送った後、三人で西門に向かう。
「水魔法ですか?」
「あぁ。試運転も無しに使うのは怖いからな。とりあえず使ってみて感じを掴んでおきたくてな。」
「遂に二つ目かー。そういや次に探す人のヒントは得られたのか?」
「一応な。なんて言えばいいのか…一言で言うなら忍者だな。いや、くノ一か。」
この世界では見ることなど出来ないはずのくノ一。
何を言っているのか分からないかもしれないが、本当にそう見えた。
黒髪をサイドテールにして背は小さい。
服装が完全にくノ一。
何を言ってるのって顔で見られると思っていたのだが…
「あー……あいつか…」
「え?!心当たりがあるのか?!」
「まぁなぁ…あまり会いたくは無いが…」
「私もですね。」
「凛がそう言うとなると…かなり癖の強い子なのか?」
「癖というか……面倒くさい奴なんだ。」
「名前はプリネラです。健よりも後に出会った子で…会えば分かるかと。」
「なんか怖いんだが…で、そのプリネラってのはどこにいそうか検討は着くのか?」
「そうだな……ここを出た時はこの街にいたんだが…」
「あれから数年経っていますし…もしこの街にいるのであれば貧民区にいると思いますよ。」
「貧民区?」
「真琴様に会う前の俺みたいな奴らが集まる場所だ。あまりいい場所とは言えない場所だな。」
「なんでそんな所に?」
「この世界では浮いた存在ではありますが、プリネラのくノ一としての腕は一級品です。
稼がねばならないとなると、一番身を隠しやすくくノ一としての仕事を得られやすい貧民区にいるかと。」
「暗殺とか偵察とかってことか?」
「そうですね。」
「なるほど。でもそんなに腕の良いくノ一だとしたら見つけるのは難しいんじゃないのか?」
「あ、それは大丈夫だ。多分近くまで行けば向こうから出てくると思うぞ。」
「???」
健達の言っていることがよく分からないが、練習が終わり次第貧民区へと向かう事になった。
貧民区、正確には居住区の一角を指してそう呼んでいる。その貧民区は街の東側にあり、他の区域とは全く異なる様相だった。
一歩足を踏み入れれば死臭が鼻を指し、そこら中に死体が転がっている。
生きているか分からない奴らの姿がたまに見えるが、ほとんど意味を成していないボロ切れを身に付け、骨と皮だけの身体が見える。
中には人間以外の種族も多く見られる。
女はなんとか小綺麗にして、その身で客をとって稼ごうと必死。
奴隷として生きていくのか、ここで生きるのか選べと言われても難しいだろう。似たようなものだ。
「真琴様。ここから先は特に気をつけてくれよ。」
元々こういうところにいた健が言うのだ。かなり危険なんだろう。
周りを見ると他人を殺してでも生きてやると言いたげな目をそこかしこから向けられる。
様子を伺い、その時が来ないかと見られている様な気がする。
暫く歩いていると健が足を止める。
「どうした?」
「んー。この先からなんか嫌な感じがするんだよなー。」
「嫌な感じ?」
「面倒くさいような…」
「どうします?一度引き返しますか?ここにいると決まったわけでは無いですし。」
「そうだな…あまりことを荒立てて目立ちたくないしなぁ。」
「いや、どうやら帰らせては貰えないみたいだな。」
ボロボロの街並みからゾロゾロとガラのわるそうな連中が出てくる。
「おいおい。こんな所に三人で来たら危ないだろ?悪い人達に捕まっちゃうよー?」
「悪い人達ねぇ。」
「おじさん達みたいなねー。」
「何が目的だ?」
「全てだよ。全部置いていけ。女もだ。」
「なんでお前達みたいな奴らって皆同じ事を言うんだ?教本とかあんのか?」
「あ?」
「まぁいい。俺達は人探ししてるだけだ。構わないでくれ。」
「残念だが、ここでは俺達が法なんだ。下手な事考えないでさっさと置いていった方が身のためだぞ。」
「あー。確かに健の言う通り面倒くさい。」
「どうする?ここまで来ていないとなるとこの辺りには現状いないと思うが…」
「他にあてはあるのか?」
「仕事中ってことかもしれないな…」
「おいおい。俺達のこと無視して話とか傷ついちゃうなー。」
「ったく。真琴様の話が聞こえないだろ。静かにしててくれ。」
「え?」
ブシュッ
健に向かってきた男の首から上が切り取られて血が吹き出す。
抜刀した事さえ気付いていないようだ。
そりゃレッドスネークの攻撃を凌げるような腕の持ち主が街のゴロツキ如きに傷を負うなんて事は無いだろう。
自分達が誰を相手にしているか理解できないらしい。
目の前の男の首が無くなったのは魔法のせいだと思ったのか、健との距離を詰める方向に動く。
むしろ健からしてみればそれは嬉しい事なのだが…
ハスラーに近付くというのは基本的な魔法潰しの戦法という事は分かるが、そんな簡単に近付ける様な相手もなかなかいないだろうに…
自分達が死地へと足を踏み入れていることにすら気付くことが出来ず結局全員健の射程範囲に入ってしまう。
「おら、どうした。魔法でもなんでも撃ってみろや!」
「ハスラーなんざ近寄っちまえばなんも出来ない雑魚なんだよ!」
ゴロツキのハスラーは身体強化に全ての魔力を注いでいるらしい。
ハスラーはハスラーと言うだけでそれなりの生活を保証されたようなものだからゴロツキになる様な連中にハスラーがいるということ自体かなり珍しい。
恐らく魔力が少ない上に身体強化くらいしか魔法が使えないのだろう。
元々戦闘力が圧倒的に低い連中にいくら身体強化を付与したってちょっと力強めの大人。くらいにしかならない。
「死ねやおらぁ!!」
周りの連中が剣を振り下ろす。
健はそれをスルスルと狭い行動範囲の中で全て避けてしまう。
本当に洗練された達人とはこういうことを言うのだろうか。
強い弱いの話以前の問題だろう。
相手がわざと剣を外して振っているのかと思う程かすりもしない。
完全に取り囲まれているのにだ。
「な、なんで当たらねぇんだ!」
「魔法か?!」
「真琴様を待たせるわけにはいかないんだ。今引いてくれれば見逃すぞ。」
「はぁ?!調子に乗るんじゃねぇ!!おい!!後ろの二人も殺っちまえ!」
「折角チャンスをやったのに。
……黒夜叉。」
チンッ
刀が鞘に収まる時の音が耳に届く。
健の周りにひしめいていた男達の身体が全て半分になる。
聞いた事があったような…確か刀技で、自分の射程圏内の敵を神速の一刀で殲滅する技だったような…
「終わったぞ。」
「なんで私達に絡んでくるのでしょうか?放っておいてくれればこちらも手を出さないんですが…」
「さぁなぁ…弱そうに見えるのかもな。」
「別に自分が強いとは思ってないが…最初の時点で引いてくれれば良かったのになぁ。」
「それにしてもこいつらは一体なんだったんだ?プリネラの事くらい聞くべきだったか?」
「こいつら程度の腕じゃプリネラは知らないと思うぞ。」
「そっかぁ…」
「真琴様。」
「ん?どうした?」
「あちらを…」
凛の指し示す方向をみると瓦礫の山に隠れる様に一人の女性がいた。
耳が長く緑色のロング髪を緩い三つ編みにしている。髪も服もボロボロ、スタイルは素晴らし…ゴホン。
エルフは皆そうなのかな?
首と手足には枷が着けられている。奴隷だ。しかし、今まで見ていた奴隷達とは違い、緑色の瞳は不安そうでありながら力強くこちらを見ていた。
「奴隷ですね。」
「目を見る限りまだ酷い目にはあってないみたいだな。」
「分かるのか?」
「目を見ればな。まだ生きてる。」
「そうゆうもんなのか。」
「それよりどうすんだ?」
「どうするって言われてもな……俺達に出来ることなんざそうないぞ。」
「捨て置きますか?」
「まぁ目覚めが悪いから多少の金だけ渡して後は自身で頑張ってもらうしかないな。」
「では、同性の私が話してきますね。」
「頼む。」
凛が近づくとビクリと体を跳ねさせるが、同性という事もあってか話は出来ているみたいだ。
「さて、プリネラとやらはどこにいるのかねぇ…」
「どっかで情報を集めないと検討つかないな。」
「だよなぁ…そう言う情報ってのはどこで集めるんだ?」
「大抵は酒場とかだな。ただそこらの酒場じゃ無理だろうな。」
「道程は長そうだな…」
「真琴様…」
「お、どうだった?」
「それが…その……」
凛は奴隷のエルフを俺の前に誘導する。
「えーっと…?一体どうしたんだ?」
「お、お供させてください!!」
「………ん?どうなったらそうなるんだ?」
「申し訳ございません!その…現在のこの人の主人が…」
「え?!俺?!なんでそんな事に?!」
「先程のゴロツキの中に主人として登録された者がいたようで…」
「それを殺したから主人が移ったと…?」
「はい。」
「それなら健に行くはずじゃ?」
「健は真琴様の従者ですので…その主である真琴様に移ったと言う事だと思います…従者は基本的に奴隷を取れないので…」
「おー…なるほど…それでなぜお供するという事になったんだ?」
「奴隷は主人として登録された者から一定以上離れてしまうと枷がその者を苦しめ、最終的に殺してしまうのです…」
「つまり俺から離れると死ぬと…じゃあ奴隷としての身分を解除したらどうなんだ?」
「それは出来ません。教会で特別な処理が必要なんです。」
「それなら教会に…」
「真琴様。それは出来ねぇ。俺達は教会にも…」
「……つまりだ、教会にも行けないとなると現状は連れて歩くしかないと?」
「……はい…申し訳ございません…」
「いや、予想は出来なかったし仕方ない事だが……困ったなぁ…」
「置いていくか?」
「お願いします!!連れて行って下さい!!」
涙目で訴えてくるエルフ。
「いや、流石にそれはしないけどさ…」
「連れてくのか?」
「魔法が使えます!強化魔法が使えます!」
「使えますって言ってもな…誰かに譲渡とかは?」
「主人の死以外で登録者を変える場合は教会へ行かなければ不可能です。」
「……」
「お願いします!お願いします!」
「んぁー…分かった…とりあえず連れていこう。」
「ありがとうございます!!」
「何か打開策が無いか調べてみよう。目立つから宿は禁止だな…
街中は避けるとするとやっぱり野宿かな…」
「私達は構いませんよ。」
「も、申し訳ございません!!」
「あー、いや、別に気にしなくて良いよ。なんとかするまでは引き受けると決めたわけだしね。」
「…はい……」
「ここから一番近いのは東門か。出たことないけど人通りとかはどうなんだ?」
「この貧民区があるからそれ程多くはないぞ。東側には小さな村がいくつかあるから全く無いって事は無いけどな。」
「……とりあえず東門から出るか…健。悪いんだがジルとガリタに簡単に説明してきてくれないか?」
「分かった。」
「俺達は東門から出た所で待ってる。」
「すぐ向かう。」
健はジルとガリタの元に走ってくれた。
俺達三人は東門に向かう。
冒険者風の男が奴隷と女を連れて歩いているとなると世間の目はわりと厳しい。
変態扱いだ。
顔を隠してそそくさと東門から出る。
健はすぐに戻ってきた。
「早かったな。」
「足は速いからな!
おっと、忘れる前に伝えとくぞ。ジルとガリタがもしかしたらプリネラの居場所を突き止めてくれるかもしれない。」
「ジル達が?」
「聞いた事があるらしくてな。詳しくは分からないし分かるかもだけど一応調べてくれるってさ。」
「関係ないのに申し訳ないな…」
「同じ事言ったら仲間だろって笑われたよ。」
「ありがたい限りだな。」
「あぁ。それで?これからどうするよ。」
「とりあえず近場の村に向かってみようかと思う。小さな村なら俺達のことは知られていないかもしれないしな。」
「それは有り得る話だが…小さな村だとそれだけ話が回るのも早いぞ?」
「奴隷も連れているとなるとそれなりに注目を集め集めますし…」
「……その問題は不確定だし取り敢えず置いておくとして、どの村に向かうかだな。」
「それならば、マージ村が良いかと。」
「マージ村?」
「ここから数日の場所にある小さな村です。
昔と変わりがなければ奴隷の随伴もそれ程気にされないかと思いますので。」
「どう言うことだ?」
「マージ村は簡単に言えば奴隷の集まる村なんだよ。」
「奴隷が…集まる?」
「奴隷には戦闘に参加させる為の奴隷がいる。」
「あぁ。それは知ってる。」
「例えば戦闘力の高い奴隷がいたとして、そいつはどうやって奴隷になったと思う?」
「生活に困ってとかか?」
「ここでは戦闘力が高いだけで稼ぎは得られるだろ。」
「冒険者か…」
「そうだ。無理矢理奴隷にされた奴もいるにはいるが、普通戦闘力の高い奴を無理矢理奴隷にしようとしても難しい。」
「最悪返り討ちだもんな。」
「じゃあどうするか。簡単だ。奴隷にした後戦闘をさせるんだ。」
「……その考えは分かったが…それとマージ村になんの関係が?」
「マージ村はダンジョンが出来たことによって作られた村なんだよ。」
「ダンジョンってあの?」
「あぁ。ゲームやアニメなんかでよく聞くやつだ。
どこからか分かっていないが、ダンジョンを形成するコアが生成し、そのコアを中心にダンジョンが形成される。」
「ダンジョンの中にはモンスターが常にいます。討伐してもモンスターはダンジョンに直ぐに取り込まれ一定時間後に別の場所に再出現します。」
「コアを壊せばダンジョンごと消えるのか?」
「その通りだ。しかしダンジョン自体は珍しく階層ごとにモンスターの強さが決まっていて修練が積みやすい。それに加えて強力な武器やアイテムが手に入る事もあるから走破してもコアが残されている場合がほとんどだ。」
「マージ村のダンジョンも随分前に走破されていますが、コアは壊されていないはずです。」
「そのダンジョンを使って戦闘力の高い奴隷を作り売るってことか。」
「はい。マージ村には奴隷を連れてくる奴隷商が多く目立ちにくいと思います。」
「分かった。
それじゃあ取り敢えずマージ村を目指そうか。」
「はい。」
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