ラムネのビー玉

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 ***  パタパタと下敷きを団扇代わりにして扇ぐが、ショートカットにした髪の背筋には汗が伝う。 「ダメだ。終わった……」  隣の男子が机に突っ伏して、白旗を振った。この日は期末テストの最終日だったのだ。 「高校に入ってから数学のレベルいきなり上がってねえか」  私は頷くしかない。私は数学よりも日本史の方が出来は悪いだろう。やはり一夜漬けの暗記ではこの暑さでは覚えた先から溶けていく。  そもそも毎年のように最高気温を更新していくのに、クーラーも取り付けていない高校なんてこの学校ぐらいじゃないだろうか。太ももに張り付くスカートをパタパタしていると隣の男子と目が合う。 「なに?」 「別に。だけど、もうちょっと恥じらいみたいなものを持とうぜ」 「……こんな田舎の高校じゃなければね」  ともあれ、高校最初の戦いは終わった。後は夏休みを待つのみである。 「またねー」 「バイバイ」  ダラダラと教室に残っておしゃべりをしていた友人たちと別れ、私は自転車に乗り込んだ。高校からすぐは下りの坂道で気持ちがいい。しかし、すぐに平坦な道に入って自分がしくじったことを実感する。  真夏の真っ昼間。むき出しの腕を容赦なく日差しが刺していく。 「あ、暑い……」  私の家がある集落は高校から一時間かかる。この季節のこの時間は地獄だ。田舎は涼しいって? それは朝や夕方、木陰の話だ。日差しがガンガン照り付けるアスファルトの上はもちろん灼熱の中。  昨日までは夕方まで学校に残って勉強していたのだけれど、今日は最終日でそのまま帰ったのが運の尽きだった。最終日はバス通学をすればよかったと思っても後の祭り。とにかくペダルを回すしかない。  そんな中、道端に小さな木造の建物が見えた。 「ああ、天の恵みだ!」
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