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戻ろうとしたが、踵を返し戻っていく。まだそこに八潮の姿がった。
「あれ、どうしたの?」
「俺、態度悪かったですよね。すみません」
「なに、別に気にしなくていいよ」
正直に、自分の名前を知っていてくれたことが嬉しかったこと、だが、それは岡谷と同じ課だったからだとしり悲しくなったことを話す。
「そうだね、切っ掛けは岡谷君だけど、夜久君が一生懸命な所を何度も見ているよ。君の所、女子が強いからね」
確か課長は八潮と同期だ。まさか、仕事をしている所を見てくれていたとは。
「それに旭日君から君の名前をよく聞くしね。お友達なんでしょ?」
「え、旭日君から、ですか」
「うん。旭日君って滅多に他の人の話をしないんだけどね。君の名前は良く聞くから」
まさか、自分の話しを八潮にしていたなんて。
「おや、もしかして恋人なのかな」
「え、な、何を言って」
「だって、すごく嬉しそうな顔をしているから」
そう言われて手で顔を覆い隠す。
顔に出ていたなんて恥ずかしい。
「あ……、友達として、ですよ」
ちらっと八潮を見ると、表情を緩めていた。
「うん、うん。旭日君、良い男だよねぇ」
やたらと楽しそうな八潮に、完全にばれたなとがっくりと肩を落とす。
「八潮課長……」
面白がっているなと恨めしく見れば、肩に手を置き、
「いやぁ、僕ね、恋バナ大好き」
なんだ、その女子みたいな台詞。
だが、こんな話を相談できるほど仲の良い友人はいないし、八潮は同性の恋愛にも抵抗はないようだ。
どうせばれてしまったんだ。相談しても構わないだろうか。
「あの、また話を聞いてもらっても」
「いいよぉ」
いつでもおいで。そう八潮はいってくれた。
優しいし甘やかすのがうまい。まるで旭日のようだと、彼を思いだして胸が痛んだ。
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