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なんか、癒されるなとほっこりとした気持ちとなった。
「ごめんな。愚痴ってしまって」
「いいっすよ。また吐きだしたくなったら聞きますから」
「ゴチソウサマ、えっと……」
食堂の兄ちゃんとしか覚えていなかった。
「旭日です。覚えてくださいね、夜久さん」
こちらの名前を知っていたことに驚いた。
「え、名前」
「社員証」
首からぶら下げている社員証を指さしていう。
「これを切っ掛けに」
話をしたのを切っ掛けに名前を覚える。確かに覚えるにはいい方法だ。
社員食堂は沢山の人が利用する。旭日はそれでなくとも目立つから顔を覚えやすいだろうが、向こうからしてみたら話をしない限りは誰が誰だかなんて解らないだろう。
「あぁ、そうだね」
旭日君、そう口にすると、彼は嬉しそうに笑った。
その日から残業があると食堂へと向かうようになっていた。
毎回あえる訳ではないが、こうして会えた日はラッキーだと、疲れた心が少し楽になる。
「また、辛そうな顔して」
慣れてくると触れられるようになった。その指は意外と優しく撫でる者だから、つい、
「旭日君、彼女さんのこともこうやって優しく撫でているの?」
なんて口にしていた。
「彼女? あぁ、俺、今はフリーなんで」
「え、もてそうなのに」
「俺、年上を甘やかしたいんですけど、向こうは甘えて欲しいみたいで、上手くいかなくて」
その気持ちも解る気がする。旭日のようなタイプが甘えてきたらキュンとなるだろう。
だが、旭日は甘やかすのがうまいから、仕事で疲れている時に癒してもらえそうだ。
「俺がもしも彼女だったら、両方もとめそう」
「それは甘えたり、甘やかしたりってことですか?」
「そう。幸せが二倍味わえそう」
それは思いつかなかったと旭日が呟く。
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