第二話

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 戻ろうとしたが、踵を返し戻っていく。まだそこに八潮の姿がった。 「あれ、どうしたの?」 「俺、態度悪かったですよね。すみません」 「なに、別に気にしなくていいよ」  正直に、自分の名前を知っていてくれたことが嬉しかったこと、だが、それは岡谷と同じ課だったからだとしり悲しくなったことを話す。 「そうだね、切っ掛けは岡谷君だけど、夜久君が一生懸命な所を何度も見ているよ。君の所、女子が強いからね」  確か課長は八潮と同期だ。まさか、仕事をしている所を見てくれていたとは。 「それに旭日君から君の名前をよく聞くしね。お友達なんでしょ?」 「え、旭日君から、ですか」 「うん。旭日君って滅多に他の人の話をしないんだけどね。君の名前は良く聞くから」  まさか、自分の話しを八潮にしていたなんて。 「おや、もしかして恋人なのかな」 「え、な、何を言って」 「だって、すごく嬉しそうな顔をしているから」  そう言われて手で顔を覆い隠す。  顔に出ていたなんて恥ずかしい。 「あ……、友達として、ですよ」  ちらっと八潮を見ると、表情を緩めていた。 「うん、うん。旭日君、良い男だよねぇ」  やたらと楽しそうな八潮に、完全にばれたなとがっくりと肩を落とす。 「八潮課長……」  面白がっているなと恨めしく見れば、肩に手を置き、 「いやぁ、僕ね、恋バナ大好き」  なんだ、その女子みたいな台詞。  だが、こんな話を相談できるほど仲の良い友人はいないし、八潮は同性の恋愛にも抵抗はないようだ。  どうせばれてしまったんだ。相談しても構わないだろうか。 「あの、また話を聞いてもらっても」 「いいよぉ」  いつでもおいで。そう八潮はいってくれた。  優しいし甘やかすのがうまい。まるで旭日のようだと、彼を思いだして胸が痛んだ。
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