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届けるは愛の文
刹那、五メートルは先に居たであろう緑の化け物が俺の懐へ飛び込む。
同時に、ヤツの握る大振りの斧が、俺の腸(はらわた)を欲するかのように吸い付
く。咄嗟に右手のナイフで防ぐ。ヤツと、俺の顔を一瞬火花が照らす。
斧の軌道はズレ、俺の頬を掠める。ナイフから伝わる衝撃に耐えきれず
俺はその場に崩れてしまった。だが、ヤツの攻撃は止まない、一撃目の
勢いのまま、天へ大きく振りかぶったかと思うと、地べたに横たわる無
防備な俺に今度は頭めがけて振り落としてきた。
「くそ!」
瞬時に俺は、右肩を全力で持ち上げ間一髪のところで、これをかわした。
さっきまで俺の頭が置かれていた地が、勢いよく叩きつけられ、大きな
穴が空く。だがこのチャンスを見逃さない。右手のナイフを逆手持ちに
切り替え、ヤツの首に突き立てる。耳を劈(つんざ)くような奇声をあげた後、
やがて息耐えた。
郵便屋とは、自分の命を賭して、依頼主の手紙と、想いを届ける
誇り高き仕事なのだ。
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