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眠りについた。
ベッドの横にある小さな窓から、暖かな光が射し込み、朝の訪れを知
らせる。まだ陽は登ったばかり、肌寒さが心地いい。シャワーと食事を
済ませた俺は、仕事着へと着替える。オーダーメイドのせいか値は張っ
たが、デザインも着心地も最高だ。最後に申し訳程度のナイフを腰に携
え、鞄を肩にかけ、宿を出た。
各国はヴァールハイトと呼ばれる、高く、厚い壁に囲われ、モンスター
の侵入から国を守る。
壁には、東西南北に各一つずつ、門が設けられるのがほとんどなのだが、
この門が厄介だ。門というのは本来、王族が軍を引き連れて、外交に出
る時のみ使われる物なので、門番兵がお堅いヤツだと、なかなか出して
はもらえない。今回は運よく、この国へ入った時と同じ気さくな老兵だ
ったのが、吉と出て、特に手続きも踏まずに開けてくれた。
(これはこれで老兵さんの身が心配なのだが……)
門が開くと視界には青々とした草原。深い森。空を翔ける翼竜達が鮮明
に移りこむ。こんなにも美しい世界が、壁の向こうにあるとは知らずに、
国民の大半が、一生に幕を閉じる。
ギルマン草原と呼ばれるこの草原は、未だ、果てまでたどり着いた者
は、いないと言われる程の大きな草原だ。この草原を今の位置から北東
へ百キロメートル程進めばザドゥーワだ。モンスター達が目を覚ます前
に、早いとこ向かうことにしよう。
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