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田倉美乃子《企みの子》の奮闘
「良かった……。ダンテ様のご機嫌を損ねることもなく、イベントを開催できて……」
敏光様をブッキングし損ねた時、田倉は本当にどうしようかと焦った。
しかし、いい考えが浮かんだ。
猫の爪オンラインショップで取り扱っている商品に携わっている美術スタッフが敏光様のレプリカを完成させたという情報を掴んでいた田倉は、その美術スタッフの元へと急いだ。
ダンテからの指示で敏光様レプリカを受け取りに来たと嘘をつき、イベントに間に合わせようとしたのだ。
『nail of a cat』に敏光様レプリカをスタンバイさせることができて安心しきっていた田倉。
窓際の席にレプリカを座らせ、自分はイベントの準備をするため地下のアジトに引っ込んでいた。
まさか、その間に敏光様レプリカが連れ去られてしまうだなんて。
田倉には想像もできなかった。
[14:30]
イベント開始まであと30分。
いつもの田倉だったらパニックに陥るところだが、今回の田倉は一味違う!
実は不測の事態のために保険をかけておいたのだ。
それがそう、レッサーパンダのふー太くん。
アライグマとレッサーパンダではかなり見た目が違うし代役には無理があるが、動物だし立っている姿は似ていると言えなくもない。
それになんといっても、可愛いのだ!
このふー太くんの可愛さなら、敏光様の可愛さにも負けていないと田倉は考えた。
だからもしものために、ふー太くんを拉致してきたのだった。
敏光様をブッキングする前に、先にふー太くんを。
[15:00]
「キャー!ふー太くん可愛いっ!」
「でも敏光様とも写真撮りたかったー」
イベントはお陰さまで大盛況。
しかし次の宣伝も忘れない。
「次回は敏光様との撮影会を行うことをお約束させていただきます!ぜひ楽しみにしていてくださいね!」
敏光様レプリカが行方不明なのは痛かったが、本物の敏光様をブッキングできなかったミスはダンテにはバレていない模様。
このイベントを成功させたことで、ダンテからの評価も上がるんじゃないかとウキウキしてしまう田倉だった。
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