第1話 美奈子の雨の日

1/1
前へ
/8ページ
次へ

第1話 美奈子の雨の日

美奈子は相当参っていた… 上級生で憧れの透に年上で社会人の彼女が居たっていう情報が飛び込んできたからだ。 そもそも美奈子と透の出逢いは半年前に逆昇る。 美奈子は雨の日が好きでは無かった。 自転車通学の美奈子は雨の日には雨具を着なければならず、いつも雨のスエた臭いが鼻を付く。 さらに雨の日の自転車を嫌い、傘を差しての徒歩での通学の日には道路に溜まった水溜まりの水を車が無情に跳ねていく! この間など大雨という事もあり、車の跳ねた水で…美奈子は頭の先から脚の先までずぶ濡れになり、このまま学校に行こうか?それとも家に帰って着替えて来ようかと10分ほど悩んだのだった。 その時に、美奈子に水を跳ねた車の運転手に食って掛かったのが透であった! 「こらあ!俺の可愛い妹に泥水跳ねやがって! 兄ちゃん、いったいどうしてくれるんだよ!」 思いの外冷静な美奈子にとって…透の行動は、 イチャモンをつけるチンピラの兄ちゃんとも映った…が しかし一応…美奈子に味方してくれている訳で…少し事の成り行きを見守った。 「ああ…すみません。申し訳ない。」 素直に非を認めるドライバーにも驚いたが、 「バカヤロー!ゴメンで済めば警察は要らねえんだよ!どうしてくれるんだ?」 と追い討ちをかける透の執拗さにも感心した。 「じゃあ…これで…。」と言って万札を数枚渡そうとするドライバーに対して、 「バカヤロー!こちとら別に金が欲しくて言ってるんじゃ無いって! 妹にちゃんと謝りな!」 ドライバーはやっと罰が悪そうに車のドアを開けて降りてきた。 「お嬢さん…済まなかったね。悪かったよ。許してくれるかい?」 美奈子「あっ、大丈夫です。私もボーっとしてたから」 ドライバー「これは洗濯代として受け取ってください」 ドライバーは美奈子に押し付けるように金を渡した。 「いいえ、こんな事でお金は貰えません!結構です」美奈子は渡された金をドライバーに突き返した。 そこへ通り掛かったのは、顔馴染みのお巡りさん。「んっ? どした? 美奈子ちゃん。」 直ぐには口を開こうとしない美奈子の代わりに透は一部始終を、そのお巡りさんに話した。 「そうかあ。これは美奈子ちゃんが訴えれば…軽犯罪法に適応されるからな!」 ドライバーは慌ててお巡りさんと美奈子に代わる代わる頭を下げて詫びた。 その場は簡単な調書を取り、ドライバーとは別れた。 「美奈子ちゃん、怪我は無かったかい?」 そういうお巡りさんに 「うん全然大丈夫。あっ痛い…」 「やっぱり捻挫かなにかしてるんだろ? 本官が負ぶってやるから…」 お巡りさんに仕切られて黙っていた透がやっと話に加わった。 「俺が負ぶってってやるよ! 美奈子ちゃんだっけ? 鴻池のほうに住んでるんだろ?」 美奈子「あっ、大丈夫です。一人で歩けます!」 透「じゃあ、荷物は持ってってやるよ。」 お巡りさん「美奈子ちゃん、この青年とは知り合いなのか?」 美奈子「あっ…あ~まあ、そんなとこです。」 お巡りさん「ホントにホントなんだな!? もし美奈子ちゃんに何かしたら承知しないからな!」 …………………………………………………………………………… 透「美奈子ちゃん…だっけ? 君は、あのお巡りさんと親しいのかい?」 美奈子「ええ…父と友達で…なにせ私のオムツを替えてくれた事があるらしくて…」 透「えっ…美奈子ちゃんのオムツを? ハ、ハハハ。ハハハハハハ。(笑)」 美奈子は透がお巡りさんに少し嫉妬してたのかなあ?と思った。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加