第2章 蒼月の瞳

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 嘔吐物と消化液は腐臭や異臭を放ち、詩季は堪らず鼻を手で抑えたが、何やら様子がおかしい。食べるのをやめたブルームーンは地面に倒れるようにぐったり寝そべってしまった。  詩季はヒューヒューと苦しそうな呼吸音を繰り返すブルームーンに駆け寄り傷を見た。太い何かで刺されたような、真っ赤に染まる傷が体毛の隙間から垣間見える。中には骨まで見えるほどに肉が抉られた箇所もあり、最後の力を振り絞って獲物にありついたは良いが、既に相当弱っていたように思える。  祖母から教わっていた治癒魔法を思い出した詩季は、杖の先端を首元にあった傷に翳してみた。何かを始めた詩季に警戒したブルームーンはやめろと言わんばかりに鼻先を詩季に向けて、牙を剥き出しながら喉を鳴らし威嚇した。  動物好きの詩季だったが、さすがにこの大きさの獣を相手にするのは怖い。しかし恐怖する姿を見せれば、いくら弱っているとは言え、頭を食い千切られれば学園に戻れなくなる所かこの世とおさらばする事になる。ここは毅然とした態度で挑むべきだ。魔獣を相手にする時は、いつだって自分が優位に立っているという心持ちと姿勢が大事だと、祖母からの教えを思い出していた。 「怪我を治すだけだから、大人しくして?」  詩季の言葉を受け入れたのか、体力が消耗されたのか、ブルームーンは再び頭を地面に寝かせた。  怪我は全部で七ヶ所あった。そのうち一ヶ所は前足の骨が折れ、相当酷い目に遭ったようだ。
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