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何とか開いていた傷口を塞ぐことに成功し、後は前足の怪我だけだった。しかし治癒魔法をこれだけの巨体に使ったのは初めてだったせいか、詩季の体力は限界だった。
杖から放たれる光も弱々しくなり、いつの間にか日が傾いた森は暗闇一色に染まりつつあった。
「ごめん……なんか、疲れて来ちゃった……」
詩季の手から杖がカランと音を立てて地面に落ち、詩季はブルームーンの体毛に体を預け気を失った。
夢を見た。両親に見送られ、ノアンドール学園に入学した懐かしいあの日だ。
「詩季、辛かったら、いつでも帰って来て良いんだからね」
「大丈夫よ! 私、お祖母様みたいな立派な魔法使いになるんだから!」
幼い我が子の意気込みに笑顔を見せるものの、不安そうに両親は顔を見合わせていた。
「純血種でもない癖に、よくこの学園に入学できたわね」
「嫌らしいコネでもあるんじゃない?」
「混合種は魔力が混濁してるから、それらしくその辺の泥水でも啜ってれば良いのよ」
「あんたには才能なんて無いんだから、とっとと退学しちゃえば良いのに」
「誰もあんたなんかに味方する奴なんて居ないわよ」
同期生達は、汚物を見るような目を向けてきた。
何で?
実力を認められたから入学出来たのに。
友達も沢山出来ると思ったのに。
どうしてみんな、私をそんな目で見るの?
どうして私はひとりぼっちなの────?
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