第2章 蒼月の瞳

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 陽だまりに浮かぶ青い瞳は、まるでサファイアのように澄んだ輝きを放っていた。蒼月を縁取る青い光は冬の空気と光が見せる錯覚とされ、その光と形に似ている瞳を持つことから、彼らはブルームーンと呼ばれていた。  こんな所で目撃するとは思ってもみない。しかし噂通り獰猛なそれは大鴉の首をとうとう噛みちぎり、息絶えた大鴉の巨体は地面に倒れた。  ブルームーンは後ろ足からガクンと力が抜けたように座り込み、二つある内の一つの頭を噛みちぎって骨までバキバキと音を立てて食べ始めた。時折詩季をチラッと見やるが、空腹だったのか食べることに集中し襲ってくる様子は無い。  辺りにはブルームーンのものか大鴉のものか分からない生臭い血の匂いが広がった。詩季は足に力を入れて立ち上がり、食事を続けるブルームーンの瞳を見つめた。瞳の奥には青々とした大海原が広がっているかのようだ。  ブルームーンが狩りをするのは夜と聞いている。それも単独ではなく群れで行うはず。しかしこのブルームーンは見たところ単独で狩りをしている。それに、体に見られる傷からは未だに鮮血がポタポタと滴り落ちている。腹を引き裂いて内臓を食べているブルームーンに、詩季は声を投げてみた。 「その怪我、どうしたの?」  詩季の問いかけに一度は青い瞳を向けたが、再び獲物に視線を戻した。それも束の間だった。突然咀嚼をやめたブルームーンは、食べた物をその場で吐き出した。
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