一から百まで

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一から百まで

雨が降っていた。 鉛色の空。先生の部屋の鍵をもらってから、始めての金曜日。 今日、初めて先生の新しい部屋に行く。 地図アプリで場所は調べてた。少し裏路地に入らなくてはいけないけど、見つかりにくそうな立地だった。 家具はまだ何もないらしい。私は自分の服を少し置いておこうと思い、バックに詰めて学校に持ってきていた。 「あら、おはよう。」 「あ、先輩。おはようございます。」 先輩は、私を見かける度に声をかけてくれる。私がなついたと言うより、先輩の方になつかれた感じだ。 「今日はずいぶんご機嫌そうね。いいことでもあったのかしら。」 「んー、そうですね。いいことありました。」 「そう。それは良かったわ。またお話聞かせてね?彼氏さんのこと。」 「え、彼氏、ですか?」 「あら?違うの?てっきりそうなのかと。だって今日は荷物がいっぱいだし、そのままお泊まりなのかしらってね。」 「あはは、今日は体育があるし、雨も降ってるので着替えを多く持ってきただけですよ。」 「ふふふ!相変わらず嘘が下手ね。…そうね、雨だもんね。雨の日は帰り道に気をつけてね。」 それじゃあね。そう言って先輩は行ってしまった。…もう、バレてしまっているんじゃないだろうか。先生に一応相談したほうがいいかな。 私は理科準備室に行くことにした。
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