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学校に着くまでが、いつもより長く感じた。
下駄箱。そっと開ける。今日は何も入っていない。
急いで理科準備室に向かう。
「先生っ!」
「…びっくりした。勢いよくドアは開けないでください。…おはよう。今日は早いですね。」
先生はコーヒーを片手に、雑誌を読んでいた。
相変わらず整頓されていない、雑誌だらけの部屋は、淹れたてのコーヒーの香りがただよっていた。
「先生!聞いてくださいよ!」
「はいはい、わかったから落ち着きなさい。…コーヒー飲みますか?」
「はい!ミルク多目で!」
はいはい、と先生は棚からコーヒーカップを一つ取り出してコーヒーを注いでくれた。毎度思うが、ビーカーとアルコールランプでコーヒーを淹れるのはどうかと思う。
「こっちに座ってください。メールで済む用事じゃあないのですか?」
「…連絡するのは迷惑かと思って。奥さん、怪しむでしょ?」
「僕の心配ですか。僕はそんなにドジじゃあないですよ。」
すぐやけどやケガをするくせに、この人は何をいっているんだ。
「それで、今日はどうしたんですか?」
「これなんですけど…。」
私は昨日の封筒を見せた。先生はそれをまじまじと見つめて「ラブレターですか。」と言って中身を見た。
「…これはずいぶんと狂信的ですね。僕宛てですか?」
「違います、私の下駄箱に入ってたんです。差出人の名前もないし、どうしたらいいかと思って。」
「ふーむ。特に気にする必要はないんじゃないですか?送り主の発想には狂気を感じますが、見守っていると言ってるわけですし、実害はないでしょう。忘れなさい。」
「そんなんでいいんでしょうか。」
「これが続くようでしたら、何か対策を考えましょう。…君が思い悩むようなこれは、こうしてしまいましょう。」
そういって先生は手紙を封筒ごとアルコールランプにかざした。手紙の端からゆっくりと火が付き、半分くらい燃えたら空のビーカーに入れた。
私はそれが燃え尽きるまでじっと眺めた。
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