封筒の差出人

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放課後、私は部活に行った。 先生はまだ来ていない。 先輩達は準備運動を始めていて、私も急いで着替えた。 大会前とあって、先輩達の気合いは高まっている。私はどうせ補欠だし、あまり気合いは入っていない。それを先輩は感じ取ったのか、いつもより当たりがキツかった。そんなの知らんし、そっちの都合を押し付けるなよ。 「ほーい、皆さん集合ですよー。」 先生が、いつもより遅れてやってきた。 「大会も近いですし、今日は試合形式で練習してみましょうか。…それじゃあチームはこれを見て分かれてくださいね。」 先生はチーム表を差し出す。念のため確認するが、私の名前はもちろん入っていない。今日も審判役だ。 先輩たちが、コートの中で一生懸命汗を流している間、私は先生の横顔を盗み見て過ごす。また遊びに連れていってくれないだろうか。 先生が私を見た。みんなには分からないくらいのわずかな微笑みを返してくれた。 今の私には、それでも十分だったかもしれない。
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