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いつもより遅い電車に乗った。天気が悪く、いつもより家を出るのが遅くなった。
遅い時間になっても、やっぱり通勤時間で電車は混んでいた。
「あ。」
部活の先輩の1人がいた。
いつも電車で会うことはなかった。この時間帯の電車を利用してるのかなと思ったけど、逆に朝練でいつもは早い電車を利用していたのかもしれない。
めんどくさいけど、挨拶をした方がいいのだろうか。
「…おはようございます。」
「おはよう。電車で会うなんて、偶然ね。この前の大会はお疲れ様。」
「先輩もお疲れさまでした。…先輩はもう部活に顔出さないんですか?他の先輩たちはまだ来てますよ?」
「そうね…私は元々そこまで積極的ではなかったし、受験勉強もあるからね。」
この人は、他の先輩とは違っていた。先生目当てで媚び売っている人とは違う、物静かで何を考えてるか分からない人だった。
「そうですか。あ、でも送別会には来ますよね。他の先輩たちが盛大にやろうって張り切っていましたよ?」
「あら、そうなの?…私は特に連絡をもらってないわ。嫌われてるのかしらね。」
やってしまった。地雷を踏みぬいた。あまり他の先輩とは仲良くないとは思っていたけど、こんなあからさまに除け者にされていたなんて。
「あれー…先輩連絡し忘れてたんですかねー。おかしいなー。」
「…ふふふ。」
上ずった声で返事をした私を見て、先輩は笑った。笑うと、女性らしさが増して、きれいな人だった。
「おもしろいわね、あなた。あんまり部活じゃお話できなかったけど、仲良くなれそう。…そうだ、今日放課後にお茶でもしない?」
「え、私とですか?…でも部活もあるしなー。」
「あなた、そんなに熱心に部活参加してたかしら?」
口実を潰される。断るのも失礼だし…しかたない。
「では、先輩のおごりでお願いします!」
「ふふふっ。」
先輩は楽しそうに笑った。
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