[三行用]ひんやりアイス

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
 ある夏の日、古い友人から奇妙な手紙が届いた。それはこんな内容だった。 「暑中お見舞い申し上げます。これ程猛暑が続くのは小学校の夏休み以来でしょうか。思わず昔を思い出します。小学校二年生の頃、僕は祖父の家の物置で大量の白い塊を見つけました。触ってみると、それには熱いような冷たいような、不思議な感覚がありました。なんとなくそれを水につけてみると、白い泡や煙が立って、ひんやりとした空気が僕を包み込んだのです。僕はそれを「ひんやりアイス」と名づけて遊んでいました。暫くすると母がやってきて、「それはおじいちゃんのだから遊んじゃだめよ」と僕を叱り、ひんやりアイスは取り上げられてしまいました。そして、母はひんやりアイスをハンカチでくるんで仏壇の間へ持っていきました。僕はその時聞こえてきた「変ね、数が多いわ」という母の独り言が今でも忘れられません。毎晩暑くて嫌になりますね。窓を開けて、涼しくして寝ましょう」  彼はいったい何が言いたかったのだろうか。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!