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「たしかにいくら地元で採用されたからって、同じ高校にその子も入ってくるとは思わないわな」  それなとしか言いようがない。無言で真尋は吸いさしをもみ消した。  どんな確立で起こるんだよ、そのミラクル。どこぞのラノベかよと自分でも思ったのだ。だが、そういうライトノベルだとか少女小説だとかは、男と女で、フィクションだから許されているのであって、誰も現実では求めていない。 「知り合いが在籍してるとこで教えるのが嫌だっていうのはわかるよ。おまえの場合はそれだけじゃなさそうだけど」 「どういう意味だよ」 「そのまんまの意味だけど。というか、どこが好きなの、そんなに」 「語弊のある言い方すんなよ。こーんなちっさいガキだったころから知ってるからかわいがってるだけで」 「はいはい。それで? じゃあ、なんでそんなにかわいがってるわけ。その子のこと」  誰よりもなによりも俺のことが好きだって思ってる馬鹿なところ。そう告白する代わりに、「情だろ」と真尋は言った。 「俺もだけど。あいつも。昔から知ってるから、べったりすんだよ」  そこだけが世界という年齢は過ぎているような気はするが、そうだとしか言いようがない。 「まぁ、それもわからなくもないけど」  おざなりに苦笑してから、「でも」と井田は言った。 「それこそ時間薬だろ。高校生なんて楽しいこといっぱいあんだから、ちょっと距離置いたら、すぐにほかに夢中になるもんができるだろ。べったりされてきついなんて言ってられんのも今のうちで。そのうち構われなくなって寂しくなるって」 「俺もそうは思うけど」  ただなぁ、と心のなかでだけ真尋は唸った。その「ちょっと距離を置く」がうまくできないから、困ってんだよなぁ、と。
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