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「本当に春野くんと新崎先生って仲いいんだね、兄弟みたい」  ふふと笑いかけてきた先輩教師である相原に、真尋は曖昧にほほえんだ。 「まぁ、こいつが五才のころから知ってるんで」 「幼馴染みってやつですよねぇ、いいなぁ。でも、新崎先生、気が弱そうだから、昔から春野くんに振り回されてそう」 「はぁ? こいつ、元ヤ……」 「春野」  とんでもないことを口走ろうとする憂を、慌てて真尋は眼鏡の奥から睨みつけた。 「相原先生に向かってなんて口の利き方だ。すみません、相原先生。年が離れてるもので、甘やかしてしまっていて」 「いーえ。春野くんくらい顔がいいと、口が悪くても許せちゃうっていうか、かわいいですよねぇ」  入学して一ヶ月で憂が国語科準備室のアイドルと化している現状に、真尋は閉口した。まぁ、かわいい顔はしているけども。一生徒だぞ。一生徒。  べつに自分が着任早々、「せっかく若い男が来たと思ったら地味眼鏡じゃんねー」などと女生徒に馬鹿にされたことを気にしているわけではない。  相原先生にしたって、俺に喋りかけるときの声のトーンとかなり違わないかと思うが、羨ましいわけでも断じてない。 「ほら、春野。早く帰れ」  いいかげん面倒になってきてしっしと追いやれば、引き際を心得ている幼馴染みはひょいと椅子から立ち上がった。  準備室を出て行く前に自分が居座ることを許している相原たち女性陣に笑顔で手を振っていくあたり、とんでもなく計算高い。もはやただの小悪魔だ。  昔はあんなふうじゃなかったのに。
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