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「かわいいですよねぇ、春野くん」
「ホント。そこらへんのアイドルなんて目じゃないかわいさだよね。なんだろ、オーラがキラキラしてる」
「小さい春野くんとか天使みたいにかわいかったんだろうなぁ。写真とかないんですか、新崎先生」
天使というたとえに、真尋は乾いた笑みを張り付けた。まさに自分だけのかわいい天使だったんですよなんて言えるわけがない。
「さすがに幼馴染みの写真なんて持ち歩いてないですよ」
「そりゃそうですよねぇ、持ち歩いてたら、なんかヤバそう……、と。あ、そういう意味じゃないですよ。そういう意味じゃ」
じゃあいったいどういう意味だと問い詰めたいのを我慢して愛想笑いを浮かべる。この一ヶ月で一番上達したのは愛想笑いかもしれない。
なんだ、この地味眼鏡はそんなに怪しいオタクにでも見えるのか。
ロリコンだと疑われた日には一発アウトな職業である。スマホのロックはしっかりかけておこうと真尋は改めて心に誓った。
画像フォルダの奥深くには「持ち歩いてるわけないですよ」と言い放った幼馴染みの幼き日の写真が眠っている。
ロリコンではないが、あのころの憂のかわいさは神様もびっくりの天使級だったのでしかたがないし、当時は真尋も中学生だったので問題ないのだということにしていただきたい。
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