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「信じらんねぇんだけど。マジそういうとこだよ。そういうとこ」 「なぁ、憂」  拗ねていようがなにしていようがかわいいなぁと思いながら、真尋は呼びかけた。 「それで、デリカシーのあるおまえは、真田になんて言ってくれたわけ?」  あの問題児は思い込みは激しいが、根っからの悪ではない。むしろ善の部類だ。だからこそ話せば通じるわけだが、いかんせん猪なので滾々と言い聞かせなければ通じない。  つまり、相当に憂はがんばったのだろうなぁと思っているのだが。  以前に聞いたときははぐらかされたのだが、なんとなくそろそろ答えてくれるのではないかなぁと真尋は踏んでいた。  案の定、しばらくの間はあったが、「べつに」というこもった声。続きを待っていると、枕に顔を押し付けたまま、憂がぼそりと呟いた。 「俺が勝手に好きなだけで、真尋はちゃんと大人の一線守ってんだから、おまえにそんなふうに言われる筋合いはねぇんだよって言っただけ」  ――大人の一線、ねぇ。  それは間違っていない。ただ、「俺が勝手に好きなだけ」ではない。真尋もしっかりと好きで大事にしている。  それを言わないのが大人の一線だというのなら、まさしくそうなのだろうけれど。 「いい子だな、おまえ」 「……助かるだろ、俺がいい子だと」 「まぁ、正直、助かるは助かるな」  本心を明かしてから、「でも」と真尋は囁いた。 「その代わり、卒業したら悪いやつになってもいいんだぞ?」
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