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歩きながら自然と視線が下がり、自分の靴先ばかりを見ていた。
オープントウのサンダルから見えるつま先には、ペディキュアのかけた爪が見えた。まるで今の自分みたい。何にもなくて、ボロボロで。
「川上は…まあ、相変わらずなんだな。」
「そう?」
陽菜乃は昔から浮気性だったって事だろうか?
「うん、変わらないな。…知ってたんだよ、アイツは。俺が誰を好きなのか、原田が誰を好きなのか。」
平原くんの口調に、歩きながらそっと横顔をうかがった。怒り?後悔?何を思っているんだろう?相変わらず整った横顔からは少し緊張感が見えるように思えた。
「でも。見習うべき所もあるな。」
「見習うって何を?」
「欲しいモノを欲しいと言うこと。欲しいモノを取りに行く行動力、かな。まあ、他人の夫の横取りはアウトだけど。」
そうだ、私だっていつまでも初恋を消化出来ずにボヤボヤしている場合じゃない。いなくなったあの子の代わりじゃなく、本当に自分の欲しい人を見つけないといけない。
じゃあ、平原くんの欲しいモノは何なんだろう?誰なんだろう?そう思った矢先、平原くんは私の目を見て言った。
「明日さ、予定ある?花火大会だろ。一緒に行かない?」
〈end〉
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