花火の記憶

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花火の記憶

「水島くんと付き合うことになったの。昨日は二人でプールに行ってきたんだ。」  聞いていないプールの話までしてくる陽菜乃。教室に響いていたクラスメイトの騒ぐ声が遠くなり、海の底にいるような気持だった。陽菜乃の探るような視線を受けながら、私はどう答えれば良いのか必死に考えた。 「…そうなんだ。良かったね。」 「あ、それでね。花火大会なんだけどさ、四人で一緒に行こうって言ってたじゃない?悪いんだけど、水島くんが二人で行きたいねーなんて言うからさ。ゴメンね。」  陽菜乃はちっともゴメンと思っていないような口調でゴメンと言った。  一気に血が廻ったように、体中がドクドク言っていた。私はどんな顔をしている?ちゃんと笑えてる?内心の動揺を悟られたくなくて、必死に表情を取り繕った。  特別イケメンとかではなく普通の男子、でも誰に対しても気さくで、優しくて、一緒にいると楽しくて。そんな水島くんが好きだった。四人で花火大会に行けばどんなに楽しいだろうと、何度も繰り返し想像した。  陽菜乃が言いだしたのに?水島くんと、平原くんと、陽菜乃と私。四人で花火大会に行こうって。母にねだって浴衣も下駄も新調してもらったのに。  紺地に朝顔の柄の真新しい浴衣。着ずにすませる上手い言い訳はある?頭の片隅にはそんな心配まで過ぎった。
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