ワープ

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ワープ

 同窓会がお開きになり、二次会に繰り出すグループはどこへ行こうかと居酒屋の前の道路でワチャワチャと騒いでいた。  そのグループをボンヤリ見ていたら、いつの間にか平原くんがすぐ横にいた。 「原田は行くの?」  初めから二次会には行くつもりがなかった。 「ううん、行かない。」 「じゃあ、一緒に帰らない?」  大概の人が二次会に参加する中、二人して駅に向かった。人通りの多い通りを並んで歩くと、あの花火大会の日を思い出した。 「平原くんこそ、二次会行かなくて良かったの?」 「ん?あー、どうせまた噂話だろ?」  テーブルは違ったけど、噂話に平原くんの名前が上がっていたのが、聞こえていたんだろうか? 「聞こえてた?」 「あれだけ大声で喋れば嫌でも聞こえる。……水島、頑張ってるよ、二人の子の父親。すっかりサッカー少年の父だよ。休みの日は全部サッカーだなんて言いながら、引率も弁当作りも、楽しそうにやってる。アイツなら大丈夫。」 「そっか。」  そうなんだ。そうだよね、誰かいなくなっても、みんな自分の人生をちゃんと生きている。水島くんも、水島くんの子どもたちも…。一足飛びにワープして、その隣に並ぼうだなんて、相手の気持ちも考えずになんておこがましいことを想像しちゃったんだろう?
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