スライム

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スライム

 ある暑い日の昼下り、私は草むらでスライムを拾った。 「わあ、かわいい」  それが私がスライムに対して抱いた感想だった。スライムはまんまるな瞳でこちらを見つめていた。感情の読めない、無機物のような目をしているが、恐ろしさは感じなかった。  スライムは、れっきとしたモンスターとして扱われているから、戦士でもない、ただの子供である私が軽はずみに触ってはいけないことになっている。しかし、このスライムなら触っても大丈夫な気がした。  私はスライムを持ち上げてみた。ちょうど手のひらに乗る大きさだ。柔らかくひんやりしている。スライムの冷たい体は、暑い夏の日にはとても気持ちがいい。 「家にスライムがたくさんいたら、涼しくていいんじゃないかしら」  私はそう思った。スライムはモンスターなので、堂々と持ち帰るとお母さんに怒られてしまうから、こっそり持って帰ろう。この大きさなら問題なく持って帰れるだろう。  私はそのスライムを持って帰った。スライムはなんの抵抗もなく大人しくしている。その夜は寝苦しい暑さだったので、スライムをおでこに乗せて寝た。とても気持ち良かった。  私はその後、スライム収集に夢中になった。  ひたすらスライムを見つけては家に持ち帰った。スライムが数十匹になると、部屋に入るだけで涼しい。  ある日、部屋で目を覚ますと、部屋の中に巨大なスライムがいた。他の小さなスライムたちは見当たらなかった。どうも、スライムたちは合体してしまったようだ。  巨大スライムは、一人がけのソファーぐらいの大きさだった。そして、よく見るとスライムの体は、真ん中のあたりが少し窪んでいた。  スライムの真ん中の窪んだところに座ったら、冷たいソファーに座っているようで気持ち良さそう……  そう思った私は、早速スライムに腰掛けた。柔らかく、ひんやりした感触が体を包んでいく。とても気持ちがいい。  だけど、気がつけば私の体はどんどんスライムに埋まっていた。足が完全にスライムの中に入ってしまって立ち上がることができない。瞬く間にお尻も腕も、スライムに取り込まれてしまっていた。 「助けてー!」  そう叫んだすぐあとに、顔がスライムの中に埋まっていった。  私は窒息死したあと、分解されてスライムの一部となった。死ぬときは苦しかったが、ひんやりした空間にずっといられるから、これはこれで心地よい。        
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