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Date…03/11/20**
昨日の事が、一秒たりとも僕の脳から離れてはくれない。
卒業式に無断で穴を空けた事だけは、普段鈍感で愚図な母に悟られてしまったらしく、僕は帰宅後父から酷く叱られた。
この僕に関心なんてない癖に、外面と様式美ばかりに拘りのある父の癪に障ってしまったらしい。
「卒業おめでとう」の言葉すらなく、延々と説教を続けた相手に不満を感じなかったと云えば嘘になる。
しかし父の言葉を素直に受け入れた理由は、早く独りになって僕だけが触れた棘兄妹の秘密に浸りたいと云う欲求からであった。
「嗚呼、思い出しただけでもお二人の美挙(びきょ)は至高だったなぁ…。」
自室に閉じ籠り。
手つかずの勉学が広がる机に頬杖を突いて、余韻を愉しむ僕はそっと瞼を伏せた。
本日より始まった春休みが実に憎い。
こんな暇があるのならば僕は彼等を鑑賞していたいのに、その願望が成就する可能性は極めて低い。
「茨様と荊様の秘密を…僕だけが知ってしまった。」
ふふふっと、思わず嗤い声を漏らしてしまう。
生徒のいない静寂が包む教室の教壇にて、荊様の頬に舌を這わせながら彼女の首筋を絞めつけた茨様。
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