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バチッ!
個室の扉を開けると同時に、再び照明が落ちた。
「また、ショート……」
突然の暗闇にも慣れてしまったのか、静かなため息が出るだけだ。そういえば、表の様子はどうなっているのだろう。シェルターのような地下の缶詰バーに守られて、遊興に耽ってしまったけれど。台風は、過ぎ去ってしまったのだろうか。
店内は異常に静かだ。最初の停電時には皆が興奮し、口々に声を上げていたというのに。もしや……。
「全員が、カップリングされてしまったとか……」
美鶴とテツヤ。
島・次朗と鞠世。
幸次郎と……。
「マスター・キザキ!?」
いや、男同士だよ。
男同士……。
江頭2:50……。
「……じゃなくて!」
ブンブンと頭を振るうが、あり得なくもない、と千鶴は思い直す。
「うん。むしろ、いいかもしれない」
気の利くキザキと、理知的な幸次郎。二人ともスレンダーで穏やかなのも、ポイントが高い。
そっか。それなら、溢れ者の自分は、夜明けまで個室に篭っていよう。誰の邪魔にもならないように……。
考えがまとまったところで、化粧台の上に伏せて目を閉じる。ガチャリ、という物音に飛び起きると、最初の停電時と同じく、キザキが目の前に立っていた。
「大丈夫? 千鶴ちゃん」
「デジャビュ……」
開きかけた唇を、再びキザキに塞がれた。
本当に、デジャビュじゃん……。
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