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程なくしてギリリとノブが回り、静かにドアが開いた。
中からは冷たい空気が溢れ出てきて、猛暑日にも関わらずゾワリと鳥肌が立った。
覗けば中は真っ暗。何も見えない。
それにドアを開けたはずの人もいない。手の込んだ自動ドアなのだろうか。
文化祭のお化け屋敷を思い出した。
室内には何かが雑然と置かれているみたいだけれど、暗すぎて何も見えない。なんだか薄気味悪いな。そう思っていると、
「やぁ、すみません。お待たせしまして」
ふいに奥から男が出てきた。
細身の身体にボサボサの髪、濃紺の和服を雑に着ている。なんとなく教科書で見た大正時代の小説家を思い出した。
「連絡は頂いてます。さぁ中へどうぞ」
青白い顔にコケた頬で、一瞬怖いと思ったけれど、バタバタと部屋中の電気を点けて回り、愛想よく僕らを中に招き入れる様子は普通の人間のようだ。お化け屋敷のお化けではないらしい。
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