零細派遣会社

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 案内されてソファーに座った。  そしてゆっくり周りを見渡して気付いた。室内が真っ暗だった理由。窓が全部塞がれてたんだ。  分厚い暗幕か緞帳(どんちょう)みたいな布が、しっかり光を遮っている。  それと……。明るさだけじゃない、室内の違和感はもう一つあった。  空気だ。  なんとも言えない湿度に、ひんやりとした空気。  まるで洞窟の中のよう。遠足で行った鍾乳洞を思い出した。独特の湿気と冷気。それがここにある。  クーラーとは全然違うひんやり感。  そんな風に、何気なく室内を観察している間に、母さんは男から名刺を受け取った。そこには『霊材派遣会社 仙道成之』とあった。 「 レイサイじゃなくてレイザイ……ですか? 」と母さん。 「はい、霊材です。人ではなく霊を派遣する会社です。なので人材ではなく霊材派遣会社です」
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