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第3話 ゴブリンが女子高生ギャルにもみくちゃにされるような物語
「おはよう喫茶ちゃん、暁くん」
桃子が挨拶を返しました。吟子も黄切も同じように応じます。
「……え? 何だそれ?」
すると、まず暁 赤也が目を白黒させて動きを止めました。その高い視線の先には当然ゴブがいます。
身長190cmという恵まれた体型。そして髪は日本人では珍しい赤毛。目は鋭く野性味を感じます。
その為か、一見すると怖いイメージを持たれやすいのは本人も気にしているところです。
案の定、ゴブも少しおっかなびっくりな様子です。
「わ! 何これ何これ人形?」
一方、一緒に入ってきた褐色な彼女は軽いノリでゴブに近づいていきます。
土井 喫茶。茶髪を波波っとさせたギャルギャルした女の子です。
「喫茶ちゃん、人形じゃないよ。ゴブちゃんだよ」
「ゴブ? あはっ、何それ何それ~おっかしぃ~」
「何か桃子が朝来たらいたんだって」
「うむ、改めて面妖なことであるな」
「へ~へ~、こいつ、こいつ~何かキモ可愛いぞ」
「ご、ゴブゥ」
「おい喫茶……」
前かがみになった喫茶が興味深そうにゴブを見ました。喫茶はお胸がかなり大きく、制服もはだけさせているので谷間が見えてしまっています。
その上スカートの丈も短いので、いまにも見えそうなスカートに赤也もたじたじです。
「あは♪ おもしろ~い、おもしろ~い」
「グビュ~……」
喫茶はゴブの頬をつねってみたり引っ張ったりして笑っています。何かツボにはまった様子でゴブを弄んでいます。
「喫茶ちゃん、あんまり乱暴にしちゃ駄目だよ」
「そうだぞ。可愛そうだろ」
「え~え~? そんなことないじゃん? じゃん? ゴブも嬉しそうじゃんじゃん」
「ゴブッ!」
そういいながら喫茶がゴブを抱き寄せました。谷間にゴブが埋もれてしまいます。
「な! おま、馬鹿! 何やってんだよ!」
「えぇ~? えぇ~? 可愛いから抱きしめてるんじゃんじゃん」
「ウブ~! ウブ~!」
「ほら、ゴブも喜んでるじゃんじゃん」
「う~ん、喫茶ちゃん。ゴブちゃん多分苦しんでるんだよ」
「え~? え~? そうなん? そうなん?」
「くっ! その谷間おそるべし!」
「ふ、風紀委員として見過ごせないのである! その谷間禁止!」
「え~? だってしょうがないじゃんじゃん? 制服がきつくてちゃんと締められないし~し~」
「何それ! 自慢か!」
「いいから喫茶、離してやれって。苦しがってんだから」
赤也が呆れ顔で指摘します。見るとたしかにゴブがモガモガしてこのままで落ちてしまいそうです。
「アハッ、ごめんね~ごめんね~」
「ゴファ~……」
ゴブは乳圧から解放され、大きく息を吐きだしました。よほど苦しかったのでしょう。
「あ! なんで逃げるのさ~さ~」
「身の危険を感じたからだろ……」
結局ゴブは再び桃子の後ろに隠れました。そしてひょっこり顔を出して喫茶の様子を覗います。
「ほ~らほ~ら、大丈夫だって。もう痛くしないからね~からね~」
「あんたが言うとちょっと嫌らしいわね……」
吟子がジト目でいいました。喫茶はゴブが離れて名残惜しそうにしてます。
「それにしてもいつも遅刻ギリギリの喫茶がこんな時間に珍しいでありますな」
「え~? そんなことないじゃん? じゃん?」
「いや、それでいつもあんた吟子に注意されてるじゃん」
そうだっけ~~? だっけ~? と視線を上げる喫茶。可愛らしくテヘッ、と口にしながら頭をコツンっと小突きました。
「喫茶はさっきまで朝練見に来ていたんだよ」
「朝練? あ、バスケの?」
桃子が赤也の顔を見て思い出すように口にしました。赤也はその体型を活かしてバスケ部に所属しています。運動神経もよく一年からレギュラーとして大会に出ていました。バスケ部期待の星とも言われています。
「ゴブ~?」
すると桃子の言葉に小首を傾げるゴブです。バスケと聞いても理解できないのでしょう。尤も人の言葉からして判っていないでしょうが。
「へ~2人ってやっぱりそんな感じだったんだ」
ニヒッと笑みを浮かべてからかうように言う吟子です。ですが赤也は若干不機嫌そうに顔を顰め。
「勘弁してくれ。喫茶はうちの先輩が目的なんだよ。大体こいつがわざわざ俺を見にくるかよ」
「そうなの?」
「そうそう。赤也のバスケ部にね、ちょーちょーイケメンの先輩がいるんらし~らし~」
「なんだ。2人は付き合い長いっていうし、遂にかって思ったんだけどね」
「ただの腐れ縁だよ」
桃子と吟子のように、赤也と喫茶も小学生からの幼馴染なのです。だからか喫茶はよく赤也のことをからかって遊んでます。
「……なんつうか、こいつは手のかかる妹って感じだしな」
「それをいうなら私がお姉さんらし~らし~」
「こんな適当な姉がいてたまるか」
「あ~いったし~いったし~この、こちょこちょこちょこちょ」
「な、やめ、馬鹿、ちょ――」
喫茶が赤也の脇をくすぐり始めました。その様子を冷めた目で見る吟子です。
「あほらし。一生いちゃついてなさいな」
「ゴブ~」
目を細めため息をついた後、吟子がゴブの頭をなでました。
気持ちよさそうにゴブが目を細めます。その様子に黄切もそっと手を伸ばしますがまたサッとかわされショックを受けていました。
「ゴブちゃん、黄切ちゃんも優しくてしっかりもののいい子なんだよ。怖くないんだよ。私の友達なんだ~」
「も、桃子どの~」
黄切が涙を流して喜びました。少し大げさに思えます。
「ゴブ~……」
なんとなく桃子の言っていることが理解できたのでしょうか? ゴブがとことこと黄切の側まで歩み寄り、頭を差し出しました。
「い、いいのか? 私が撫でていいのか?」
「ゴブ~」
「は、はぁ~すべすべだ~そしてぷにぷにだ~」
幸せそうな顔を見せる黄切です。ゴブも今ではすっかりされるがままなようです。
「おっはよ~~~~!」
するとまたもや教室に入ってきた元気いっぱいの女子。ショートカットのボーイッシュな女の子です。
しかし、何かちょっと妙な感じを受けます。そしてそれに敏感な反応を示したのはゴブを撫で回していた黄切でした。
「ちょ、葵殿! またそんな格好で!」
立ち上がり、振り返るやいなやツカツカと彼女に向かっていきました。
元気いっぱいな少女の名前は海駕 葵。水泳部所属の明るい女の子。
ですが、何故か教室にやってきた彼女は水着姿です。競泳水着姿なのです。
これには全員が驚く、様子は見えません。むしろ、やれやれ、や、相変わらずだなぁ、といった様相です。
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